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《内容ネタバレ》「グランクレスト戦記」1巻をレビュー!!

富士見ファンタジア文庫グランクレスト戦記」シリーズ!

1巻についてレビューさせていただきます。

※1巻のネタバレを含みますのでご注意ください。

※ネタバレを希望されない方は、以下の作品紹介記事をご覧ください。

tino-review.hatenablog.com

グランクレスト戦記 1 虹の魔女シルーカ (富士見ファンタジア文庫)

1巻内容ダイジェスト

幻想詩連合大公シルベストル・ドゥーゼと、大工房同盟大公マティアス・クライシェ。同盟と連合は大陸を二分する二大勢力であり、最近まで覇権をかけた大戦を始めると噂されていました。しかし、シルベストルの嫡子アレクシスとマティアスの長女マリーネの結婚により、その状況は急激に変化し、平和への道筋が開けます。二人の世継ぎが生まれれば、両大公家が保有している爵位がひとつに統合され、皇帝聖印が復活し、秩序の時代が始まると期待されていました。

アレクシスとマリーネの結婚式。大陸中が祝福する中、突如会場にデーモンロードが出現。シルベストルとマティアスの両大公が殺害され、大陸は再び混沌の色を強く示し始めます。

エーラム魔法大学を卒業した魔法師シルーカ・メレテスは、アルトゥークの好色伯ヴィラールとの契約に向かう最中、騎士テオと出会います。テオに君主として最も必要な要素を見出したシルーカは、彼と強引に契約し忠誠を誓います

シルーカを襲ったクローヴィスの小領主メストは、魔法師協会に背いたことから爵位を全て剥奪され、テオに差し出すことに。メストからの爵位を得たテオは、領土の引き継ぎを開始。メストの元契約魔法師サトゥルスは、テオと契約し、近隣領主であるクローヴィス王シェイクス子爵へと交渉に赴きます。

着々と領土を治める準備を進めるシルーカ。彼女は、”始祖君主レオンのような人物こそが皇帝聖印を完成させるべき”と考えており、テオがその理想に適った君主であることを伝えます。テオは彼女の話を聞き、故郷であるシスティナ全島を支配する君主を目指すこととします。

クローヴィスに隣するセーヴィスの小領主ラシック・ダビッドは、魔法師モレーノと共に、クローヴィス内のテオの治める領土へと侵攻を開始。対するテオたちは、シルーカの友人であるアイシェラ、侍従のアーヴィンを中心に応戦します。テオが魔法師モレーノを捕虜にしたことで、ラシックは降伏。テオへの従属を願い出ました。ラシックの聖印を手に入れたことで、テオの爵位男爵になります。

男爵となったテオは、シルーカの提案で”コルネーロ”というシスティナの英雄ジュードの家名を名乗ることに。更にラシックの領土を奪い返しに来た四人の君主を返り討ちにし、子爵には届かないものの、クローヴィスとセーヴィスの中では大きな勢力となりました。

クローヴィス王との交渉を終えたサトゥルスは、クローヴィス領内では領地拡大を行わないことを条件に、テオの聖印の独立とメストの元領土を所有することを密約。また、モレーノが向かったセーヴィス王ナヴァルとの交渉は決裂し、両軍はセーヴィス中央の草原で雌雄を決することとなります。

テオは戦旗パトリオットを発動させ、新しく従属したネーマンとラシックを左右に展開します。敵は左右の君主を無視して中央のテオに攻め入るも、ネーマンとラシックに回り込まれて壊滅。セーヴィス王ナヴァルの本隊にも大打撃を与えますが、シルーカの指示でナヴァルを見逃します

セーヴィス王は大工房同盟盟主に、領土奪還の援助を申請。対するシルーカは、養父の繋がりを利用して、直接同盟盟主マリーネ・クライシュに面会し、マリーネへの従属を申し出ます。マリーネはシルーカの養父アウベストの進言に従って、シルーカの申し出を棄却。セーヴィス王の申請に従い、テオの領土へ攻め入ることを決めます。

同盟に拒まれたシルーカは、連合を頼るべくアルトゥークを訪れますが、アルトゥーク伯の魔術師長マルグレットにより追い返されてしまいます。

ヴァルドリンド辺境伯マリーネが、セーヴィス王ナヴァル準子爵と共にテオの領土へと侵攻を開始。自軍が三千程度なのに対し、敵は一万余りと絶望的な状況。アイシェラを中心に奮闘し、彼女自身大怪我を負うも、敵にも甚大な被害を与えます。更にラシックとモレーノの活躍でセーヴィス王を討ち取ることに成功しますが、逆に敵に総力戦を決意させるきっかけとなり、戦いは泥沼化していきます。

両軍に多大な被害を出し、ヴァルドリンド軍も疲弊してきたころ、連合のアルトゥーク伯がマリーネの本隊を奇襲。ヴァルドリンド軍は撤退し、テオたちは窮地を救われます。

アルトゥーク伯ヴィラールは、シルーカを元々自身と契約していたことにして、テオをセーヴィス王コルネーロ子爵として認めようとしますが、テオはその提案を固辞。テオは、シルーカを契約魔法師としたまま、一騎士としてアルトゥーク伯に従属したいと申し出ます。ヴィラールはマルグレットの進言もあり、テオを迎え入れることを承諾。テオはシルーカと共に、引き続きシスティナの開放を目指します。

圧倒的な戦記ファンタジー作品

同盟と連合間の政治的・軍事的な駆け引きが、”聖印”や”混沌”といった独自の設定を盛り込んだファンタジー世界を舞台に描かれている作品。

”聖印”という設定により、君主の力量と従属関係が分かりやすく表現されており、戦記作品として非常に面白く読むことが出来ました。それぞれのキャラクターが魅力的なのは勿論のこと、全てのエピソードに圧倒的な迫力を感じます

水野先生の作品ではお馴染みの、騎士の主人公と魔法師のパートナーが中心の物語。間違いのない文章力と構成力、表現力で、最高の戦記ファンタジー作品となっています。

TIPS

《アルトゥーク》

ヴィラール・コンスタンス伯爵が治めており、西と北、そして東の国境を大工房同盟と接する幻想詩連合のひとつ。ヴィラール自身、伯爵を名乗っているものの、爵位辺境伯に達していると噂され、幻想詩連合の重鎮でもあります。

ヴィラールは魔法大学の女子学生とだけ契約し、二十五歳を超えると解約するという好色伯。しかし、領地の立地条件的には激戦区になると予想され、質の高い魔術師が求められている場所でもあります。

《聖印》

君主となるために必要で、一般的には仕えている主人から授かるもの。君主同士の主従関係は聖印を介して成立しており、主人である君主は従属する君主の聖印を取り上げることもできます

君主間の戦いでは、勝者が敗者の聖印を奪い、自らの聖印に統合することも可能。こうして成長した聖印は、それに応じた爵位を与えられます。

2巻ネタバレレビュー

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《内容ネタバレ》「物理的に孤立している俺の高校生活」3巻をレビュー!!

ガガガ文庫「物理的に孤立している俺の高校生活」シリーズ!

今回は3巻についてレビューさせていただきます。

※3巻のネタバレを含んでいますのでご注意ください。

※本作を未読の方は、以下の紹介記事をご覧ください。

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物理的に孤立している俺の高校生活 3 (ガガガ文庫)

3巻内容ダイジェスト

高鷲とのLINEで、自分に”男友達”がいないことに気付いた業平。危機感を覚えた彼は、高鷲と”どちらが先に自力で友人を作れるか”勝負をすることになります。

愛河の提案により、正式な同好会として申請することになった”人間関係研究会”。今まで通り、五階のシュミレーション室を同好会で使用することを許されるも、活動実績作りのために、学校の文化祭へ出店することに。生徒会からの助っ人大福卜全の提案により、人研部はセレクトショップ系カフェ『意識高い系』を出店すること決定します。

クラスではメイド喫茶をやることになった高鷲、汐ノ宮、業平の三人は、そちらの準備にも取り掛かります。クラスでメイド服の試着が行われ、高鷲が一身田と会話をする機会に恵まれます。二人が友人関係を築けそうなことに気付いた業平は、高鷲を陰ながら応援することにします

一方、同好会側の出店準備は、大福の助けによって順調に進みます。大福は包容力があるため、業平も安心して会話ができる様子。彼と友人になれる可能性を見出した業平は、積極的に距離を詰めていきます。

汐ノ宮は本、高鷲はマイナーロック音楽CDと相撲グッズ、愛河は百均小物をセレクトショップに陳列。業平は出店時に必要な小物を愛河と買い出しに行くなど、文化祭へ向けた青春を楽しみます

文化祭初日、副生徒会長のエリアスは自身が不純物を取り除いた水を販売し、愛河はクラスのお化け屋敷で幽霊役をやるなど、各々文化祭を楽しんでいる様子。手の空いていた業平は、高鷲の作っていたチラシを配って宣伝するなど、客集めに尽力します。

客がなかなか集まらない人研部のカフェに、同じクラスの一身田が来店実はマイナーロック音楽が趣味の彼女は、高鷲と意気投合。仲良く音楽談義を始め、業平は二人を温かく見守ります。

昼過ぎになった頃、業平と愛河、大福と汐ノ宮はそれぞれペアを作って、文化祭を回ることに。業平は愛河と共に出店を次々と回って、文化祭を十分に楽しみます。高鷲と一身田の関係が深まるように応援していることを愛河に話すと、しっかり保護者をしていると業平は揶揄われてしまいます。

文化祭初日は客の集まりが微妙だったことから、二日目は文化祭のイベントに参加してカフェをアピールすることに。汐ノ宮はミスコン、愛河はお菓子大食い、高鷲と業平はクイズ大会に出場し、それぞれ優勝。カフェをしっかりと宣伝することができました。

文化祭が終わり、大福と後始末をしていると、彼から汐ノ宮が好きだという話を聞きます。エリアスや愛河と違って、”おとなしい系”の汐ノ宮が好みと言う大福に、業平は違和感を抱きます。汐ノ宮を”おとなしい系”とタグ付けして、個人として見ていない所に嫌悪感を覚え、大福に対して苦言を呈します。大福の考え方は業平自身にも覚えがあり、自己嫌悪もあった様子。結局、大福とLINE交換をするような空気ではなくなり、そのまま解散となりました。

高鷲と文化祭の反省会をした業平は、まず一身田と高鷲を仲良くさせるために、クラスの打ち上げに参加します。無事、一身田と友人になれた高鷲は、業平を大福のもとへ連れて行き、彼らのLINE交換を援護。業平と大福も、友人関係を構築することに成功します。

結局、高鷲と業平の勝負は、一瞬早く友人関係を成立させた高鷲の勝利となりました。業平への命令権は”とっておきの場面”まで取っておくという高鷲に、業平は恐れおののくも、友人が出来て楽しそうな彼女の後姿を嬉しそうに見守ります。

業平の成長を描いたエピソード

前巻まであまり自主性を感じなかった主人公の業平ですが、今回のエピソードでは彼の譲れない”矜持”を感じることが出来ました。友人関係となれそうだった大福に対し、”間違っている”と思ったことを、そのまま指摘。さらに自身の行動も見直して反省します。

今までのエピソードでは、一部の人たちを”リア充”とタグ付けして、個人を見ることなく”友達になれない人たち”と決めつけていた業平。今回の”気付き”を通して、今後彼がどのように変わっていくのか、次巻以降が楽しみになりました。

業平が成長するまでの描き方について

前項で業平の成長について書かせていただきましたが、ここに至るまでの彼の経緯を見返すと、展開の巧さに驚かされました。

彼は元々、間違ったことを”間違っている”と言うことのできる人間でしたが、中三の時の夏祭りのトラウマにより、人間関係にかなり臆病になっていました。1巻~2巻でも、他人に対して積極的に踏み込むことを避けているように読めます。

しかし、2巻の終盤でエリアスから夏祭りの時に彼女が感じていたことを聞かされ、以前の彼の積極性が少し戻って今回のエピソードに至ったとしたなら、今回の彼の考え方や人付き合いの変化にも説得力が生まれてきます

業平の行動が薄っぺらな正義感でなく、”彼の成長”として読めたのは、ここまでの展開が丁寧に描かれていたからだと分かり、森田先生の構成の巧さに感動しました。

高鷲の魅力を感じる描写

今までは愛河のヒロイン力が強く、いまいち目立てていなかった高鷲ですが、今回のエピソードでは魅力を感じることが出来ました

セリフ的には残念な発言が多いですが、業平を思いやるような行動の頻度が上がったように感じます。業平自身も、自分と考え方の似ている高鷲に親近感を覚えているようですし、業平、高鷲、愛河の三人の関係性も面白くなってきました愛河は微妙に駆け引きを開始しているような描写もありますので、今後の展開が楽しみです。

 

以上、3巻についてのネタバレレビュー記事を書かせていただきました。シリーズものの良さを活かしつつ、今後の展開が楽しみになるような構成になっており、かなり満足の一冊となっています。

今回も長文をお読みいただきまして、ありがとうございます。

2巻ネタバレレビュー

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《内容ネタバレ》「なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?」2巻をレビュー!

MF文庫J「なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?」2巻についてレビュー!

※2巻のネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

※ネタバレを希望されない場合は、以下の記事をご覧ください。

tino-review.hatenablog.com

なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?2 堕天の翼 (MF文庫J)

2巻内容ダイジェスト

ウルザ連邦奪還作戦が成功し、悪魔族から王都を奪還したカイたち。王都の復興を開始するウルザ人類反旗軍ですが、突如、冥帝ヴァネッサに次ぐ悪魔ハインマリルが襲来します。ハインマリル以外にも”英雄級”の悪魔が2体同行し、人間たちがこれ以上悪魔族の領土に進出しないよう警告。カイは要求を受け入れ、悪魔族とは一時休戦となります。

カイたちとウルザ人類反旗軍の遠征班は、イオ連邦を目指しラダ・クレイン幹線道路を進行。ワイバーンに襲われるなどトラブルに遭遇しつつも、無事イオ連邦に到着し、イオ人類反旗軍に熱烈な歓迎を受けます

ただ、イオ人類反旗軍の指揮官ダンテは、ウルザ人類反旗軍の指揮官ジャンヌの求心力に嫉妬し、彼らの参戦を歓迎していない様子。日増しに部下と民衆の信頼を得ていくジャンヌに焦ったダンテは、指揮官補佐のキュビレイに唆されて、エルフの森にて参謀と近しい部下たちと共に”エルフ捕獲作戦”を実行。程なくして、カイたちにダンテの消息不明の一報が届きます。

ダンテ捜索のため、エルフの森へ侵入するカイたち。リンネが蛮神族専用の審門を発見し、起動に成功。エルフの里に辿り着き、ダンテを唆した指揮官補佐キュビレイと遭遇します。キュビレイは、偵察のために人間に変装してダンテの指揮官補佐となっていたこと、ダンテたちは生きたまま人質としていることをカイたちへ伝えます。

キュビレイと巫女のレーレーンから、ダンテたちの解放と引き換えに天使たちとの戦闘を要求され、カイたちは天使の宮殿を目指すことになります。彼女たちによると、エルフの大長老が主天アルフレイヤに捕らえられ、早急に手を打つ必要があるそう。

カイたちは、レーレーンと共に天使の宮殿へ向かいますが、中庭には何体もの天使がアルフレイヤに処罰され、倒れていました。襲撃してきた戦天使ヴィシャス大天使ラファエロに仲間たちが応戦。カイとジャンヌ、レーレーンの三人は、仲間が作った隙を利用して、アルフレイヤの元へと向かいます。

主天アルフレイヤの法術に、”世界座標の鍵”で対抗するカイ。アルフレイヤの傍らには、ヴァネッサとの戦闘の際に現れた”切除器官”がいます。ルフレイヤと切除器官の協力体制を知ったカイは、”シド”について質問。”シド”というワードをきっかけに、何かの記憶を思い出そうとするアルフレイヤでしたが、切除器官が突如裏切り、不意打ちでアルフレイヤを消滅させてしまいます

切除器官に取り込まれたアルフレイヤは、堕天した化身として再構築され、カイたちへ攻撃を開始します。法具なしで、オーバーヒート気味に法術を連発するアルフレイヤ。顕現させたフランベルジュは、対法術に特化したレーレーンの霊装すら一撃で切り裂きます。

カイは”世界座標の鍵”を使い、アルフレイヤのフランベルジュと剣を交えます。剣術にも精通しているカイは、アルフレイヤを圧倒。剣術以外にもアーツを駆使してアルフレイヤを追い詰め、両足を薙ぎ払うことで背中から転倒させます。天使の背中は法力器官であり急所のため、ルフレイヤは消滅します。

「世界に渦巻く憎悪を、打ち砕け」という言葉を残したアルフレイヤ。エルフの大長老から、アルフレイヤの様子が変わったのは、十年前に”牙皇”ラースイーエと国境で対峙してからとの情報を得ます。カイたちは蛮神族と休戦協定を結び、巫女レーレーンを仲間に加えて、次なる目的地へ向かいます。

何も明かされなかった世界の謎

今回のエピソードでは、1巻で出てきていた謎について殆ど明らかになりませんでした。むしろ謎は増えている状況。

・主天アルフレイヤと、冥帝ヴァネッサの証言の矛盾

ヴァネッサは”この世界の元凶は、四英雄のどれか”と言い残したのに対し、アルフレイヤは”この世界に渦巻く増悪を打ち砕け”と発言。”世界輪廻を発動させた元凶”と、”全ての黒幕”は別に存在しているような証言になります。

この描写だけでは、まだ何も見えてきませんので、3巻以降に期待です。

聖霊族と幻獣族の英雄が判明

牙皇ラースイーエは炎のような毛並みをもった獣人聖霊族の英雄、六元鏡光はスライムであることが判明しました。イグアス・フォール大瀑布で二人は対峙しており、ラースイーエは六元鏡光へ聖霊族は、今日ここで世界から消える」と宣言。

ラースイーエの傍らには、彼に懐いた”切除器官”の姿があります。アルフレイヤの変化にも、彼は関係していたように作中で語られていましたが、”咬ませ犬”感が酷いです。

世界輪廻を発動し、アルフレイヤへ切除器官を紹介したのはラースイーエ。しかし、結局彼も”全ての黒幕”によって操られているような状況だと予想。

展開が1巻の焼きまわし

期待されて刊行された「なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?」2巻ですが、展開的には1巻の”焼きまわし”のような印象でした。

敵の本拠地へ攻め込み、仲間が道を切り開いて、カイが敵の英雄と対峙。切除器官が英雄を弱体化させたのち、世界座標の鍵とアーツを駆使して英雄を倒すという展開。最後に一言メッセージを残すというのも全く同じで、二回続くと少し間抜けに感じます

本作の魅力の一つである”謎”についても放置され気味で、”納期重視で書かれた2巻”という印象。刊行の間隔が空いたとしても、もう少し練った展開にしていただいた方が良かったように思います。

TIPS

《他種族の危険指数》

十年級:廃墟を徘徊する斥候たち。訓練された傭兵ならば撃退可能。

百年級:傭兵部隊でようやく勝負になるが、常に死の危険を伴う。

千年級:強大無比。人間があらゆる手段で挑んでも常に全滅する可能性がある。

英雄級:冥帝ヴァネッサ。あるいはそれに準じる個体。目撃されているのは数体のみ。

〈試読レビュー〉HJ文庫新作「勤労魔導士が、かわいい嫁と暮らしたら?」!!

HJ文庫の新シリーズ「勤労魔導士が、かわいい嫁と暮らしたら?」について試読レビュー!

勤労魔導士が、かわいい嫁と暮らしたら?って?

勤労魔導士が、かわいい嫁と暮らしたら?「はい、しあわせです! 」 (HJ文庫)

著者:空埜一樹

イラスト:さくらねこ

健気でかわいいお嫁さんと、ほんわか甘々新婚生活!

仕事が好き過ぎて恋愛とは無縁の生活を送ってきた勤労魔導士の青年ジェイク。そんな彼のお嫁さんになりたいと訪ねてきたのは、八歳も年下の小柄で華奢な美少女リルカだった!!明るく朗らかな性格と完璧すぎる家事能力。その上、ジェイクのことを心から想う健気さも持ち合わせた超ハイスペック嫁であるリルカとの暮らしによって、仕事一筋だったジェイクの日常は、より楽しく、より優しく、より温かなものへと変わっていく――。一緒にいるだけで幸せな二人の、ほんわか新婚ファンタジー!

真面目な主人公と完璧嫁の癒し系作品

主人公のジェイクは、史上最年少で魔導士として最高の称号「七ツ星」を得た”魔導薬士”です。掃除も料理も殆どしない、仕事一辺倒の彼に対して、師匠のメーヴィス=マグタフィアは結婚相手としてリルカを紹介。二人の新婚生活が始まります。

あらすじに書かれている通り、本作は”癒し系ファンタジー”というジャンル。仕事が好きすぎる変人主人公と、13歳の超ハイスペック嫁である美少女リルカの、ほのぼの日常ストーリーになっています。

本作については、ジャンル的にも”キャラクター”に魅力を感じられるかどうかが、評価の分かれるポイントになるかと思います。主人公とリルカに魅力を感じる方であれば楽しく読め、逆に魅力を感じない場合は少し退屈なストーリーになってしまうかもしれません

ストーリーに捻りと起伏が欲しい

日常系のほのぼの作品というジャンルは、ストーリーの盛り上がりに欠けやすい印象があります。癒し系というコンセプトのため、読者のストレスを軽減していった結果、起伏のないサラっとしたストーリーに仕上がってしまうのが原因だと思っています。

ストーリーの評価については、試読部分だけでは分からず、全編を読んでみないと評価できない項目です。本作の場合、世界観やキャラクター設定などが特に尖ったものではありませんので、ストーリーの完成度も作品評価に大きく関わってくると思います。

無味無臭のストーリーでも、一定数の評価は得られるかと思います。しかし、個人的には少し捻った”インパクトのある”展開になっていた方が好みです。どんなストーリーになっているのか、楽しみです。

美少女リルカのキャラクター設定

本作の冒頭から主人公に対する好感度がMAXなリルカ。おそらく、ストーリーの中で、彼女が主人公のことを好きになった理由が語られると思いますが、どんなエピソードとなっているのかが気になります。

サラっとした理由もありかと思いますが、”意外な理由”などでリルカにミステリアスな印象を与えるエピソードがあれば、キャラクターに深みが出て面白い展開になりそうです。リルカが見たままの”完璧美少女”という属性だけだと、あまり印象に残らないかもしれません。

 

今回はHJ文庫の新作「勤労魔導士が、かわいい嫁と暮らしたら?」について紹介させていただきました。気になった方は、是非試読されてみてください。

今回も長文をお読みいただきましてありがとうございます。

《レーベル別11月新刊紹介》2017年11月新刊の各レビュー記事をご紹介!

11月発売の新刊ライトノベルについて、レーベル別に記事をまとめました。

《最終更新:2017/11/22 23:00》

戦闘員、派遣します! (角川スニーカー文庫)

11月1日発売:角川スニーカー文庫

戦闘員、派遣します!

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6番線に春は来る。そして今日、君はいなくなる。

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マジメな妹萌えブタが英雄でモテて神対応されるファンタジア

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ワンワン物語~金持ちの犬にしてとは言ったが、フェンリルにしろとは言ってねえ!~

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11月1日発売:HJ文庫

勤労魔導師が、かわいい嫁と暮らしたら?

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11月10日発売:電撃文庫

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うさみみ少女はオレの嫁!?

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お前(ら)ホントに異世界好きだよな〜彼の幼馴染は自称メインヒロイン〜

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青春デバッガーと恋する妄想#拡散中

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処刑タロット

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ストライク・ザ・ブラッド

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11月15日発売:GA文庫

いつかのレクイエム case.1 少女陰陽師とサウル王の箱

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3年B組 ネクロマンサー先生

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変奏神話群 剣風斬花のソーサリーライム

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11月17日発売:ガガガ文庫

弱キャラ友崎くんLv.5

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年下寮母に甘えていいですよ?

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俺の立ち位置はココじゃない!

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先生とそのお布団

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11月17日発売:富士見ファンタジア文庫

リア充絶対爆発させるマン

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再演世界の英雄大戦

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11月25日発売:MF文庫J

〈順次投稿予定〉

11月25日発売:オーバーラップ文庫

〈順次投稿予定〉

11月30日発売:ヒーロー文庫

〈順次投稿予定〉

11月30日発売:ファミ通文庫

〈順次投稿予定〉

レーベル別10月新刊紹介

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〈試読レビュー〉角川スニーカー文庫新作「ワンワン物語」!!

角川スニーカー文庫の新作「ワンワン物語~金持ちの犬にしてとは言ったが、フェンリルにしろとは言ってねえ!~」について試読レビュー!

ワンワン物語って?

ワンワン物語 ~金持ちの犬にしてとは言ったが、フェンリルにしろとは言ってねえ!~ (角川スニーカー文庫)

著者:犬魔人

イラスト:こちも

念願かなって飼い犬になれたはずが、転生したその体は―フェンリル!?

過労死したロウタの願いは、もう働かなくていい金持ちの犬への転生。その願いは、慈悲深い女神によって叶えられる。優しい飼い主のお嬢様。美味しいご飯と昼寝し放題の毎日。しかし、ある日気づいてしまう。

「大きな体、鋭い牙、厳つい顔……これ犬じゃなくて狼だ!?」快適なペットライフを守るため、ロウタは全力で犬のフリをするが、女神の行きすぎたサービスはそれどころではなかった。

狼は狼でも、伝説の魔狼王フェンリルに転生していたのだ!

日常系ペットライフ物語

本作の主人公は、現世で過労死したロウタ。女神によってフェンリルに転生したロウタは、優しい飼い主のお嬢様と共に、ほのぼの異世界ライフを開始します。

この作品の注目すべきポイントは”キャラクター”です。主人公が犬(フェンリル)という特殊なキャラクターであり、元人間とは思えない適応力を見せてくれます。また、世界観・設定は通常の異世界ファンタジー系、ストーリーはほのぼの日常系という組み合わせの作品。キャラクターが好きになれない場合は、本作に感情移入することは難しいと思いますので、試し読みいただいてからの購入をオススメします。

軽く読んで笑いたい方にオススメ

本作には重厚な因縁なども存在せず、ほのぼのとしたストーリーと、主人公とその周辺のちょっと変な登場人物たちのコメディが中心になっています。

短い日常系エピソードが複数繋がってストーリーが進んでいきますので、ちょっと時間が空いた時に軽く読む本に向いている印象。キャラクターたちは全員愛嬌があり、読んでいてたまにクスっと笑えるような明るい作品です。

次巻が読みたくなる”ストーリー”が必要

日常系作品は短編エピソードの連続のため、次の巻を読みたいと読者に思わせる”引力”が弱い印象があります。ほのぼのエピソードを中心としつつ、”次の巻も買って読みたい”と思わせるストーリーがあれば、より魅力的な作品になると思います。

 

以上、角川スニーカー文庫の新作「ワンワン物語」について試読レビューさせていただきました。小説家になろうである程度まで作品を読むことが出来ますので、気になった方は是非読んでみてください。

今回も長文をお読みいただき、ありがとうございます。

小説家になろう試読リンク

ncode.syosetu.com

〈試読レビュー〉角川スニーカー文庫新作「マジメな妹萌えブタが英雄でモテて神対応されるファンタジア」!!

角川スニーカー文庫新作「マジメな妹萌えブタが英雄でモテて神対応されるファンタジア」について試読レビュー!

マジメな妹萌えブタが英雄でモテて神対応されるファンタジアって?

マジメな妹萌えブタが英雄でモテて神対応されるファンタジア (角川スニーカー文庫)

著者:みかみてれん

イラスト:パルプピロシ

妹成分供給率2000%! 圧倒的妹力で、目覚めよ異世界お兄ちゃん!!

実妹に痩せると誓った連城蒼太はジョギングの道すがら、突如異世界へ転生。転移先の世界は……デブが英雄!?しかし、それでも痩せたい蒼太。見かねた宮廷サイドは、好物の「妹」を揃えた甘々生活を提供し――!?

デブがモテて最強な異世界

本作の主人公である連城蒼太は、体重110kgオーバーの肥満体形。デブは早死にすると妹に言われ、急遽ダイエットを開始するも、ジョギング中に妹と共に異世界へ転移してしまいます。

異世界では脂肪=魔力であり、デブは強力な魔法を連発できる最高戦力として扱われます。また美的感覚もかなり異なっており、デブの方がモテる様子。

妹の莉緒が姫の影武者となっているヴィテッロ王国は、サルスィチャ帝国により侵攻を受けている状況。蒼太は妹を守るため、帝国との戦いに身を投じます。

設定とキャラクターで読ませる作品

本作は”デブが最強”という珍しい設定と、主人公を兄と慕う様々な”妹キャラ”が最大の魅力となっています。

試読部分を読む限りでは、ストーリーは異世界系俺TUEEE作品のセオリーに忠実です。ただ、”デブが強い”という特殊な設定のため、セオリー通りのストーリーでも、何故か新鮮な面白さを感じます。俺TUEEEの厨二感を”デブ要素”が打ち消すので、良いバランスの設定になっている印象です。

また、異世界では非常にモテる主人公に、異世界の美少女たちが主人公の弱点である”妹”となって次々アプローチしてきます。色々な属性を持つ妹たちのハーレムを築きながら、最強のデブが王国を救うという展開。妹キャラクターが好きな方に特にオススメな作品です。

軽めでコメディタッチなストーリー

設定とキャラクターがコミカルな方向でまとまっていますので、ストーリーも軽めでコメディ調になっています。本作の設定とキャラクターで重厚なストーリーを描かれても違和感が強いので、相性の良い組み合わせだと感じました。

難しく考えることなく、サラっと読むことができる作品ですので、疲れた時などに読むと元気が出るかもしれません。また、ボンレスハムみたいなお嬢様魔法使いが、魔力(脂肪)が尽きて華奢な美少女になってしまったりと、イラストで見るのも楽しみなシーンが多そうです。

 

今回は、角川スニーカー文庫新作「マジメな妹萌えブタが英雄でモテて神対応されるファンタジア」を紹介させていただきました。かなり設定とキャラクターで攻めてきている作品ですので、気になった方はカクヨムの試読をお読みいただければと思います。

長文をお読みいただきまして、ありがとうございます。

カクヨム試読リンク

kakuyomu.jp