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《内容ネタバレ》「なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?」2巻をレビュー!

MF文庫J「なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?」2巻についてレビュー!

※2巻のネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

※ネタバレを希望されない場合は、以下の記事をご覧ください。

tino-review.hatenablog.com

なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?2 堕天の翼 (MF文庫J)

2巻内容ダイジェスト

ウルザ連邦奪還作戦が成功し、悪魔族から王都を奪還したカイたち。王都の復興を開始するウルザ人類反旗軍ですが、突如、冥帝ヴァネッサに次ぐ悪魔ハインマリルが襲来します。ハインマリル以外にも”英雄級”の悪魔が2体同行し、人間たちがこれ以上悪魔族の領土に進出しないよう警告。カイは要求を受け入れ、悪魔族とは一時休戦となります。

カイたちとウルザ人類反旗軍の遠征班は、イオ連邦を目指しラダ・クレイン幹線道路を進行。ワイバーンに襲われるなどトラブルに遭遇しつつも、無事イオ連邦に到着し、イオ人類反旗軍に熱烈な歓迎を受けます

ただ、イオ人類反旗軍の指揮官ダンテは、ウルザ人類反旗軍の指揮官ジャンヌの求心力に嫉妬し、彼らの参戦を歓迎していない様子。日増しに部下と民衆の信頼を得ていくジャンヌに焦ったダンテは、指揮官補佐のキュビレイに唆されて、エルフの森にて参謀と近しい部下たちと共に”エルフ捕獲作戦”を実行。程なくして、カイたちにダンテの消息不明の一報が届きます。

ダンテ捜索のため、エルフの森へ侵入するカイたち。リンネが蛮神族専用の審門を発見し、起動に成功。エルフの里に辿り着き、ダンテを唆した指揮官補佐キュビレイと遭遇します。キュビレイは、偵察のために人間に変装してダンテの指揮官補佐となっていたこと、ダンテたちは生きたまま人質としていることをカイたちへ伝えます。

キュビレイと巫女のレーレーンから、ダンテたちの解放と引き換えに天使たちとの戦闘を要求され、カイたちは天使の宮殿を目指すことになります。彼女たちによると、エルフの大長老が主天アルフレイヤに捕らえられ、早急に手を打つ必要があるそう。

カイたちは、レーレーンと共に天使の宮殿へ向かいますが、中庭には何体もの天使がアルフレイヤに処罰され、倒れていました。襲撃してきた戦天使ヴィシャス大天使ラファエロに仲間たちが応戦。カイとジャンヌ、レーレーンの三人は、仲間が作った隙を利用して、アルフレイヤの元へと向かいます。

主天アルフレイヤの法術に、”世界座標の鍵”で対抗するカイ。アルフレイヤの傍らには、ヴァネッサとの戦闘の際に現れた”切除器官”がいます。ルフレイヤと切除器官の協力体制を知ったカイは、”シド”について質問。”シド”というワードをきっかけに、何かの記憶を思い出そうとするアルフレイヤでしたが、切除器官が突如裏切り、不意打ちでアルフレイヤを消滅させてしまいます

切除器官に取り込まれたアルフレイヤは、堕天した化身として再構築され、カイたちへ攻撃を開始します。法具なしで、オーバーヒート気味に法術を連発するアルフレイヤ。顕現させたフランベルジュは、対法術に特化したレーレーンの霊装すら一撃で切り裂きます。

カイは”世界座標の鍵”を使い、アルフレイヤのフランベルジュと剣を交えます。剣術にも精通しているカイは、アルフレイヤを圧倒。剣術以外にもアーツを駆使してアルフレイヤを追い詰め、両足を薙ぎ払うことで背中から転倒させます。天使の背中は法力器官であり急所のため、ルフレイヤは消滅します。

「世界に渦巻く憎悪を、打ち砕け」という言葉を残したアルフレイヤ。エルフの大長老から、アルフレイヤの様子が変わったのは、十年前に”牙皇”ラースイーエと国境で対峙してからとの情報を得ます。カイたちは蛮神族と休戦協定を結び、巫女レーレーンを仲間に加えて、次なる目的地へ向かいます。

何も明かされなかった世界の謎

今回のエピソードでは、1巻で出てきていた謎について殆ど明らかになりませんでした。むしろ謎は増えている状況。

・主天アルフレイヤと、冥帝ヴァネッサの証言の矛盾

ヴァネッサは”この世界の元凶は、四英雄のどれか”と言い残したのに対し、アルフレイヤは”この世界に渦巻く増悪を打ち砕け”と発言。”世界輪廻を発動させた元凶”と、”全ての黒幕”は別に存在しているような証言になります。

この描写だけでは、まだ何も見えてきませんので、3巻以降に期待です。

聖霊族と幻獣族の英雄が判明

牙皇ラースイーエは炎のような毛並みをもった獣人聖霊族の英雄、六元鏡光はスライムであることが判明しました。イグアス・フォール大瀑布で二人は対峙しており、ラースイーエは六元鏡光へ聖霊族は、今日ここで世界から消える」と宣言。

ラースイーエの傍らには、彼に懐いた”切除器官”の姿があります。アルフレイヤの変化にも、彼は関係していたように作中で語られていましたが、”咬ませ犬”感が酷いです。

世界輪廻を発動し、アルフレイヤへ切除器官を紹介したのはラースイーエ。しかし、結局彼も”全ての黒幕”によって操られているような状況だと予想。

展開が1巻の焼きまわし

期待されて刊行された「なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?」2巻ですが、展開的には1巻の”焼きまわし”のような印象でした。

敵の本拠地へ攻め込み、仲間が道を切り開いて、カイが敵の英雄と対峙。切除器官が英雄を弱体化させたのち、世界座標の鍵とアーツを駆使して英雄を倒すという展開。最後に一言メッセージを残すというのも全く同じで、二回続くと少し間抜けに感じます

本作の魅力の一つである”謎”についても放置され気味で、”納期重視で書かれた2巻”という印象。刊行の間隔が空いたとしても、もう少し練った展開にしていただいた方が良かったように思います。

TIPS

《他種族の危険指数》

十年級:廃墟を徘徊する斥候たち。訓練された傭兵ならば撃退可能。

百年級:傭兵部隊でようやく勝負になるが、常に死の危険を伴う。

千年級:強大無比。人間があらゆる手段で挑んでも常に全滅する可能性がある。

英雄級:冥帝ヴァネッサ。あるいはそれに準じる個体。目撃されているのは数体のみ。