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《内容ネタバレ》「冴えない彼女の育てかた」13巻をレビュー!!

富士見ファンタジア文庫冴えない彼女の育てかた」13巻をネタバレありでレビューします!

※「冴えない彼女の育てかた」13巻のネタバレを含みますので、ご注意ください。

※作品未読の方は、以下の特集記事をご覧ください。

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tino-review.hatenablog.com

冴えない彼女の育てかた13 (ファンタジア文庫)

13巻内容ダイジェスト

とうとう加藤さんに告白した安芸。加藤さんは答えをはぐらかしつつ、一旦安芸の家へ戻ることを提案します。親へなんとか言い訳しつつ、加藤さんの三泊目が決定しました。

お互いお風呂に入って気分を変えたのち、安芸の部屋で向かい合う二人。加藤さんは、答えの前に”英梨々”と”詩羽先輩”に対する気持ちを安芸へ確認します。安芸は、彼女たちのことは「好き」ですが、同時に劣等感などの感情を抱いてしまい”怖さ”を感じてしまうことを告白。そして加藤さんには”怖さ”を感じなくて、”頑張れば何とかなる”と思えたため、世界で一番大切なヒロインになったこを伝えます。

加藤さんは、「消去法」で選ばれたことに少し不機嫌になりながらも、安芸を受け入れ、二人はキスをします。

十一月末、”blessing software"は全素材の完パケとゲームの組み上げを目標とした合宿がスタート。先日の恵との”出来事”をシナリオ化した『巡璃27』について、加藤さんが総ボツを提案するも、他のメンバーからなだめられ、伊織から煽られて結局採用することになります。

その後、詩羽先輩も『巡璃27』をチェック。エピローグに”転”を入れたがるも、加藤さんの反発もあり、「二人の幸せはずっと続く~」エピローグのまま大筋は変更しないことになりました。(GS3を知らない)安芸は、加藤さんと詩羽先輩がいつのまにかギスギスしていることに少し驚きます。

原画担当の出海は、最終シナリオに七枚のイベントCGが必要だと主張。安芸は”締め切り間際の七枚の原画”というトラウマを思い出しつつ反対しますが、英梨々がアシスタントを担当することで納得。新旧の原画担当が最終シナリオでタッグを組むことになります。

音楽担当の美智留は、巡璃ルートのエンディング曲を作曲。今までの巡璃ルートの音楽をメドレー形式に奏でたのち、サビはそれら全てを包括するような、優しげで、けれど切なくて、幸せに満ちていながらも物寂しい音楽。ゲームを最初からプレイした人のみに突き刺さる、最凶の涙腺破壊兵器が完成します。

仕上げは安芸のシナリオテキストの微修正作業。全編を詩羽先輩が校閲したため、赤字の量が膨大になり、加藤さんも修正を手伝うことに。加藤さんは巡璃ルートを担当するも、照れや羞恥心で動揺し、つられて安芸も挙動不審になります。二人は手を握り合いながら、なんとか作業を完了させます。

十二月三十一日、東京ビッグサイトコミケ三日目。2,000枚を搬入した”blessing software"ですが、昼時には完売。余韻にひたりつつ撤収し、安芸の自宅へ打ち上げに集まります。新作の評判をチェックすると、シナリオは少し叩かれるも、評価は上々の様子です。

打ち上げの合間に、英梨々と二人きりになる安芸。クリエイターとして英梨々の隣にたてなかったこと、十年前に英梨々と話し合って仲違いしないように動けなかったこを彼女に謝ります。英梨々は”安芸と加藤さんの今の関係”に触れつつ、別れ際に”十年前は自分のことが好きだったか”を安芸に質問。安芸はそれに答えず、誤魔化します。

英梨々との決着に涙する安芸。そこへ、詩羽先輩がやってきます。安芸は、意を決して加藤さんと先月から付き合っていることを報告。そして、これからも安芸は霞詩子と霞ヶ丘詩羽のファンでいることを誓います。安芸の気持ちを理解した詩羽先輩は、”自分のことを好きだったか”を安芸へ質問。答えられない安芸に対し、”いつまでも安芸は自分に恋し続ける”と勝ち名乗りを上げて、打ち上げ会場へ戻っていきます。

詩羽先輩と英梨々に話すべきことを言い終えた安芸は、なかなか会場に戻る決心がつかずにいました。そこへ加藤さんが迎えに現れ、二人は手を繋ぎます。コミケが終わった達成感と少しの寂しさにひたりつつ、将来のことを話し合います。打ち上げ会場にいる皆と、また”何かを創り出したい”と話す加藤さん。除夜の鐘を聞きながら、二人は想いを通い合わせます。

季節は移り、卒業式後の三月、安芸は大学受験を失敗し進路に悩みます。美智留のバンドのマネージャー、不死川の編集者もしくは小説家、紅坂企画への就職など複数の魅力的なルートがある中、安芸は加藤さんへ相談します。加藤さんが、安芸がどこへ向かおうとも安芸倫也だけのメインヒロインでいること”を伝えると、安芸は”全て”を追いかけることを決意。それは、加藤さんが進学した不死川大学に挑戦しつつ、サークル活動を続け、いずれ真の”blessing software”を取り戻すということ

新たな伝説を作るべく、再び稼働した”blessing software”。企画書を練り上げるため、加藤さんと安芸はまた泊まり込みで合宿を始めます。

想像の上の上をいくハッピーエンド

冴えない彼女の育てかた」シリーズの最終巻、想像していた告白後の展開は、以下の三つのパターンでした。

① 探偵坂で告白を受け入れた加藤さん。その後、サークルメンバーに報告し、詩羽先輩と英梨々との関係にも決着をつけ、エピローグへ。

告白を一旦保留にして帰宅する加藤さん。安芸は返事が気になってモヤモヤしつつも、何とかゲームを完成させます。打ち上げで加藤さんがOKの返事をして、エピローグへ。

冬コミ前ということを理由に、あえて安芸の告白を断る加藤さん。安芸は悲しみつつも何とかゲームを完成させます。打ち上げ後、意を決して再度加藤さんへ告白する安芸。今度は受け入れられ、エピローグへ。

12巻の時点でヒロインはほぼ加藤さんに確定していましたので、あとは”どのタイミングで付き合い始めるか”が問題でした。③は可能性が低く、①か②のどちらかかと予想していましたが、答えは想像の上を行くハッピーエンドでした。

要素としては①に近いですが、まさか安芸の自宅に二人で引き返して、あそこまで盛り上げてくるとは思いませんでした。13巻がほぼ丸ごとエピローグとなっているような構成。丸戸先生はエピローグを大切にされると聞いていましたが、名作の余韻にひたらせてくれる最高の最終巻だったと思います。

約五年かけて表現された”最高のメインヒロイン”

仮に、本作の1巻~12巻のあらすじだけ聞いた人が、13巻を読んだ場合、色々シーン描写がくどく、”良い作品”には見えないと思います。

本シリーズは、約五年をかけて読者側に少しずつキャラクターたちへ感情移入させてきました。13巻は、その読者たちだからこそ感情に刺さるような描写になっており、特にメインヒロインの魅力を感じられる表現になっています。1巻完結作品の場合は、どんな表現をされてもここまで感情に刺さらないでしょうし、本作の第一部終了となる7巻までだったとしても、今回の読了後の満足感には勝てなかったと思います。

メインヒロインが最も輝くタイミングで丸戸先生が物語を完結され、深崎先生の美麗なイラストで表現された”最高のメインヒロイン”に圧倒された作品でした。

新たな”最高のメインヒロイン”像を期待

本シリーズにより、テンプレに沿わないメインヒロインの”加藤恵”は、間違いなく人気のメインヒロインになりました。そんなヒロインを生み出した丸戸先生には、どうしても更に新しい”最高のメインヒロイン像”を期待してしまいます。

もしかすると次回作はゲームかもしれませんし、全く異なるジャンルの作品を発表されるかもしれませんが、今後も作品を追いかけたいと思わせる引力がある先生だと感じます。

冴えない彼女の育てかた」シリーズの後日談なども可能性はありそうですし、まだまだ目が離せません。

 

以上、「冴えない彼女の育てかた」シリーズの本編最終巻のレビューを書かせていただきました。”本作に出会えて良かった”と思える最高の作品だったと思います。

今回も長文になりましたが、お読みいただきましてありがとうございます。

12巻ネタバレレビュー

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考察記事リンク

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