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〈試読レビュー〉MF文庫J新作「図書迷宮」!!

MF文庫Jから刊行の新作「図書迷宮」!

第十回MF文庫Jライトノベル新人賞、三次選考通過作品。

作品が未完のまま規定ページ数を使い切ってしまった問題作について、レビューさせていただきます。

※試読部分のネタバレを含みますのでご注意ください。

※以下にネタバレなしの読後レビューを掲載しています。

tino-review.hatenablog.com

図書迷宮って?

図書迷宮 (MF文庫J)

著者:十字静

イラスト:しらび

足掻いてください、あなたが人間足りうるために。

あなたは思い出さなければなりません。心的外傷の奥に潜む父の仇を探し出し、奪われた名誉と失った魔法を取り戻すのです。吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウォーカー)の少女、アルテリアと共に。そのために図書館都市を訪れ、ありとあらゆる本が存在する図書迷宮に足を踏み入れたのですから。

あなたには一つの大きな障害があります。あなたの記憶は八時間しか保ちません。ですが、方法はあります。確かにあるのです。足掻いてください、あなたが人間足りうるために。全ての記憶を取り返すために。

二人称視点の珍しい作品

本作を試読して最初に気になったのは、視点が独特な点。最近のライトノベルで面白い作品は、一人称視点か三人称の多元視点のイメージで、二人称視点の作品は一般文芸を含めても殆ど読んだ記憶がありません。

一人称視点の場合、主人公へ感情移入しやすい文章になりますが、二人称視点の場合は巧く使いこなせれば”一人称視点以上に”主人公へ感情移入しやすい文章になると聞きます。

まるで自身へ語り掛けるような地の文章に、どれだけ違和感なく読者側が主人公と自分を重ね合わせて、物語に没頭できるのかが良作か否かの鍵になるかと思います。

試読部分を読んだ限りではまだ何とも言えませんが、興味を惹かれる作品であることは間違いありません。

吸血鬼の真祖とその眷属の物語

主人公の奥月綜嗣は、図書迷宮の都アレクサンドリア「薬草院」に編入した十六歳の学生。彼は類希なる魔導の才を持っていましたが、五年前に父親を目の前で斬殺され、魔法と記憶を失います。

失った記憶と魔法を取り戻し、五年前の真実を突き止めるため、やっとの思いで帰還した「薬草院」。しかし、アレクサンドリアを訪れた当日、何らかの事情により図書迷宮で死亡。吸血鬼の真祖であるアルテリアの眷属となることで一命をとりとめた彼は、引き続き謎を追い求めます。

過去に重いトラウマを持つ奥月の”真実”がどのようなものなのか、続きが気になる物語となっています。

時間制限付きの記憶と魔導書

主人公の奥月は八時間しか記憶が保ちません。記憶が八時間ごとにリセットされるというイメージとのこと。

そんな彼のただ一つの希望となり得るのが魔導書”千一頁の最後の祈り”保有者が数十センチの近くにいる際、記憶が書き込まれ、瞬時に主人公にもフィードバックされる機能があります。

しかし、”千一頁の最後の祈り”は千一頁しかないため、それまでに奥月は記憶を失わない手段を見つけ出す必要があります。

まるでゲームのプロローグのような展開。主人公が向かう先にどのような困難があるのかは分かりませんが、”記憶のリセット””魔導書のページ制限”がどのように物語の展開へ関わってくるのかも楽しみです。

 

以上、新作「図書迷宮」のレビューを書かせていただきました。非常に続きが気になる作品ですので、読むのが楽しみです。

今回も長文をお読みいただきましてありがとうございます。