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MF文庫J「図書迷宮」の魅力をご紹介!

MF文庫Jの長編新作「図書迷宮」!

ネタバレなしで魅力を紹介させていただきます。

※用語集を作成しましたので、本作を読まれていて必要な方はご覧ください。

tino-review.hatenablog.com

図書迷宮って?

図書迷宮 (MF文庫J)

著者:十字静

イラスト:しらび

足掻いてください、あなたが人間足りうるために。

あなたは思い出さなければなりません。心的外傷の奥に潜む父の仇を探し出し、奪われた名誉と失った魔法を取り戻すのです。吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウォーカー)の少女、アルテリアと共に。そのために図書館都市を訪れ、ありとあらゆる本が存在する図書迷宮に足を踏み入れたのですから。

あなたには一つの大きな障害があります。あなたの記憶は八時間しか保ちません。ですが、方法はあります。確かにあるのです。足掻いてください、あなたが人間足りうるために。全ての記憶を取り返すために。

真実を追い求める物語

本作の最大の魅力は、”複雑怪奇なストーリー”。殺されてしまった父、失った魔法、八時間しか保てない記憶。全てを見失った主人公が、吸血鬼の真祖と共に”真実”を探し求めます。

「なぜ主人公は吸血鬼の真祖と共にいるのか?」「だれが父を殺した黒幕なのか?」「なぜ主人公は魔法が使えないのか?」

図書館都市という不思議な街で、主人公が手に入れる様々な情報のピースを繋ぎ合わせ、何が真実なのかを考える物語です。

主人公が手に入れる情報には”嘘”も混じっており、読者側も展開を理解しながら読み進めないと混乱してしまう、複雑な構成になっています。ボリュームは相当ありますが、時間を置いてしまうと展開が分からなくなるため、一気に読むのがオススメです。

ストーリー優先のキャラクターたち

図書迷宮を舞台に繰り広げられる壮大なストーリーが魅力の本作。ただ、著者の書きたいストーリーがハッキリとし過ぎているため、キャラクターたちは”ストーリーを描くための歯車”となってしまっている印象もあります。

展開は二転三転し、迫力のあるストーリーになっていますが、キャラクターたちが”ストーリー優先”で動くため、実際の行動とキャラクターのイメージが乖離して、冷静に考えると違和感を抱くシーンがいくつかあります。

キャラクター重視で作品を読まれている方の場合、あまり好みの作品ではない可能性がありますのでご注意ください。

肝心なところでご都合主義な設定

世界観や魔法発動までの設定など、壮大且つ細かに練られていて、興味を惹かれる内容になっています。

ただ、魔導書の発動条件や異能の効果などで曖昧な部分が多く、クライマックスでは、若干主人公側に都合よく傾き過ぎな印象もありました。後出しで追加される設定も多かったため、クライマックス以降は若干置いてけぼりにされてしまったような気分になります。

 

以上、図書迷宮について紹介させていただきました。

批評に近い記事になってしまいましたが、”著者の書きたいものを描いた”という印象が強い作品です。

あまり読者側のことを意識されていない印象もありますが、”ありきたりな作品”に飽きた方にはオススメできる作品かと思います。

今回も長文をお読みいただきありがとうございます。