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《内容ネタバレ》「グランクレスト戦記」1巻をレビュー!!

富士見ファンタジア文庫グランクレスト戦記」シリーズ!

1巻についてレビューさせていただきます。

※1巻のネタバレを含みますのでご注意ください。

※ネタバレを希望されない方は、以下の作品紹介記事をご覧ください。

tino-review.hatenablog.com

グランクレスト戦記 1 虹の魔女シルーカ (富士見ファンタジア文庫)

1巻内容ダイジェスト

幻想詩連合大公シルベストル・ドゥーゼと、大工房同盟大公マティアス・クライシェ。同盟と連合は大陸を二分する二大勢力であり、最近まで覇権をかけた大戦を始めると噂されていました。しかし、シルベストルの嫡子アレクシスとマティアスの長女マリーネの結婚により、その状況は急激に変化し、平和への道筋が開けます。二人の世継ぎが生まれれば、両大公家が保有している爵位がひとつに統合され、皇帝聖印が復活し、秩序の時代が始まると期待されていました。

アレクシスとマリーネの結婚式。大陸中が祝福する中、突如会場にデーモンロードが出現。シルベストルとマティアスの両大公が殺害され、大陸は再び混沌の色を強く示し始めます。

エーラム魔法大学を卒業した魔法師シルーカ・メレテスは、アルトゥークの好色伯ヴィラールとの契約に向かう最中、騎士テオと出会います。テオに君主として最も必要な要素を見出したシルーカは、彼と強引に契約し忠誠を誓います

シルーカを襲ったクローヴィスの小領主メストは、魔法師協会に背いたことから爵位を全て剥奪され、テオに差し出すことに。メストからの爵位を得たテオは、領土の引き継ぎを開始。メストの元契約魔法師サトゥルスは、テオと契約し、近隣領主であるクローヴィス王シェイクス子爵へと交渉に赴きます。

着々と領土を治める準備を進めるシルーカ。彼女は、”始祖君主レオンのような人物こそが皇帝聖印を完成させるべき”と考えており、テオがその理想に適った君主であることを伝えます。テオは彼女の話を聞き、故郷であるシスティナ全島を支配する君主を目指すこととします。

クローヴィスに隣するセーヴィスの小領主ラシック・ダビッドは、魔法師モレーノと共に、クローヴィス内のテオの治める領土へと侵攻を開始。対するテオたちは、シルーカの友人であるアイシェラ、侍従のアーヴィンを中心に応戦します。テオが魔法師モレーノを捕虜にしたことで、ラシックは降伏。テオへの従属を願い出ました。ラシックの聖印を手に入れたことで、テオの爵位男爵になります。

男爵となったテオは、シルーカの提案で”コルネーロ”というシスティナの英雄ジュードの家名を名乗ることに。更にラシックの領土を奪い返しに来た四人の君主を返り討ちにし、子爵には届かないものの、クローヴィスとセーヴィスの中では大きな勢力となりました。

クローヴィス王との交渉を終えたサトゥルスは、クローヴィス領内では領地拡大を行わないことを条件に、テオの聖印の独立とメストの元領土を所有することを密約。また、モレーノが向かったセーヴィス王ナヴァルとの交渉は決裂し、両軍はセーヴィス中央の草原で雌雄を決することとなります。

テオは戦旗パトリオットを発動させ、新しく従属したネーマンとラシックを左右に展開します。敵は左右の君主を無視して中央のテオに攻め入るも、ネーマンとラシックに回り込まれて壊滅。セーヴィス王ナヴァルの本隊にも大打撃を与えますが、シルーカの指示でナヴァルを見逃します

セーヴィス王は大工房同盟盟主に、領土奪還の援助を申請。対するシルーカは、養父の繋がりを利用して、直接同盟盟主マリーネ・クライシュに面会し、マリーネへの従属を申し出ます。マリーネはシルーカの養父アウベストの進言に従って、シルーカの申し出を棄却。セーヴィス王の申請に従い、テオの領土へ攻め入ることを決めます。

同盟に拒まれたシルーカは、連合を頼るべくアルトゥークを訪れますが、アルトゥーク伯の魔術師長マルグレットにより追い返されてしまいます。

ヴァルドリンド辺境伯マリーネが、セーヴィス王ナヴァル準子爵と共にテオの領土へと侵攻を開始。自軍が三千程度なのに対し、敵は一万余りと絶望的な状況。アイシェラを中心に奮闘し、彼女自身大怪我を負うも、敵にも甚大な被害を与えます。更にラシックとモレーノの活躍でセーヴィス王を討ち取ることに成功しますが、逆に敵に総力戦を決意させるきっかけとなり、戦いは泥沼化していきます。

両軍に多大な被害を出し、ヴァルドリンド軍も疲弊してきたころ、連合のアルトゥーク伯がマリーネの本隊を奇襲。ヴァルドリンド軍は撤退し、テオたちは窮地を救われます。

アルトゥーク伯ヴィラールは、シルーカを元々自身と契約していたことにして、テオをセーヴィス王コルネーロ子爵として認めようとしますが、テオはその提案を固辞。テオは、シルーカを契約魔法師としたまま、一騎士としてアルトゥーク伯に従属したいと申し出ます。ヴィラールはマルグレットの進言もあり、テオを迎え入れることを承諾。テオはシルーカと共に、引き続きシスティナの開放を目指します。

圧倒的な戦記ファンタジー作品

同盟と連合間の政治的・軍事的な駆け引きが、”聖印”や”混沌”といった独自の設定を盛り込んだファンタジー世界を舞台に描かれている作品。

”聖印”という設定により、君主の力量と従属関係が分かりやすく表現されており、戦記作品として非常に面白く読むことが出来ました。それぞれのキャラクターが魅力的なのは勿論のこと、全てのエピソードに圧倒的な迫力を感じます

水野先生の作品ではお馴染みの、騎士の主人公と魔法師のパートナーが中心の物語。間違いのない文章力と構成力、表現力で、最高の戦記ファンタジー作品となっています。

TIPS

《アルトゥーク》

ヴィラール・コンスタンス伯爵が治めており、西と北、そして東の国境を大工房同盟と接する幻想詩連合のひとつ。ヴィラール自身、伯爵を名乗っているものの、爵位辺境伯に達していると噂され、幻想詩連合の重鎮でもあります。

ヴィラールは魔法大学の女子学生とだけ契約し、二十五歳を超えると解約するという好色伯。しかし、領地の立地条件的には激戦区になると予想され、質の高い魔術師が求められている場所でもあります。

《聖印》

君主となるために必要で、一般的には仕えている主人から授かるもの。君主同士の主従関係は聖印を介して成立しており、主人である君主は従属する君主の聖印を取り上げることもできます

君主間の戦いでは、勝者が敗者の聖印を奪い、自らの聖印に統合することも可能。こうして成長した聖印は、それに応じた爵位を与えられます。

2巻ネタバレレビュー

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