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《内容ネタバレ》「物理的に孤立している俺の高校生活」3巻をレビュー!!

ガガガ文庫「物理的に孤立している俺の高校生活」シリーズ!

今回は3巻についてレビューさせていただきます。

※3巻のネタバレを含んでいますのでご注意ください。

※本作を未読の方は、以下の紹介記事をご覧ください。

tino-review.hatenablog.com

物理的に孤立している俺の高校生活 3 (ガガガ文庫)

3巻内容ダイジェスト

高鷲とのLINEで、自分に”男友達”がいないことに気付いた業平。危機感を覚えた彼は、高鷲と”どちらが先に自力で友人を作れるか”勝負をすることになります。

愛河の提案により、正式な同好会として申請することになった”人間関係研究会”。今まで通り、五階のシュミレーション室を同好会で使用することを許されるも、活動実績作りのために、学校の文化祭へ出店することに。生徒会からの助っ人大福卜全の提案により、人研部はセレクトショップ系カフェ『意識高い系』を出店すること決定します。

クラスではメイド喫茶をやることになった高鷲、汐ノ宮、業平の三人は、そちらの準備にも取り掛かります。クラスでメイド服の試着が行われ、高鷲が一身田と会話をする機会に恵まれます。二人が友人関係を築けそうなことに気付いた業平は、高鷲を陰ながら応援することにします

一方、同好会側の出店準備は、大福の助けによって順調に進みます。大福は包容力があるため、業平も安心して会話ができる様子。彼と友人になれる可能性を見出した業平は、積極的に距離を詰めていきます。

汐ノ宮は本、高鷲はマイナーロック音楽CDと相撲グッズ、愛河は百均小物をセレクトショップに陳列。業平は出店時に必要な小物を愛河と買い出しに行くなど、文化祭へ向けた青春を楽しみます

文化祭初日、副生徒会長のエリアスは自身が不純物を取り除いた水を販売し、愛河はクラスのお化け屋敷で幽霊役をやるなど、各々文化祭を楽しんでいる様子。手の空いていた業平は、高鷲の作っていたチラシを配って宣伝するなど、客集めに尽力します。

客がなかなか集まらない人研部のカフェに、同じクラスの一身田が来店実はマイナーロック音楽が趣味の彼女は、高鷲と意気投合。仲良く音楽談義を始め、業平は二人を温かく見守ります。

昼過ぎになった頃、業平と愛河、大福と汐ノ宮はそれぞれペアを作って、文化祭を回ることに。業平は愛河と共に出店を次々と回って、文化祭を十分に楽しみます。高鷲と一身田の関係が深まるように応援していることを愛河に話すと、しっかり保護者をしていると業平は揶揄われてしまいます。

文化祭初日は客の集まりが微妙だったことから、二日目は文化祭のイベントに参加してカフェをアピールすることに。汐ノ宮はミスコン、愛河はお菓子大食い、高鷲と業平はクイズ大会に出場し、それぞれ優勝。カフェをしっかりと宣伝することができました。

文化祭が終わり、大福と後始末をしていると、彼から汐ノ宮が好きだという話を聞きます。エリアスや愛河と違って、”おとなしい系”の汐ノ宮が好みと言う大福に、業平は違和感を抱きます。汐ノ宮を”おとなしい系”とタグ付けして、個人として見ていない所に嫌悪感を覚え、大福に対して苦言を呈します。大福の考え方は業平自身にも覚えがあり、自己嫌悪もあった様子。結局、大福とLINE交換をするような空気ではなくなり、そのまま解散となりました。

高鷲と文化祭の反省会をした業平は、まず一身田と高鷲を仲良くさせるために、クラスの打ち上げに参加します。無事、一身田と友人になれた高鷲は、業平を大福のもとへ連れて行き、彼らのLINE交換を援護。業平と大福も、友人関係を構築することに成功します。

結局、高鷲と業平の勝負は、一瞬早く友人関係を成立させた高鷲の勝利となりました。業平への命令権は”とっておきの場面”まで取っておくという高鷲に、業平は恐れおののくも、友人が出来て楽しそうな彼女の後姿を嬉しそうに見守ります。

業平の成長を描いたエピソード

前巻まであまり自主性を感じなかった主人公の業平ですが、今回のエピソードでは彼の譲れない”矜持”を感じることが出来ました。友人関係となれそうだった大福に対し、”間違っている”と思ったことを、そのまま指摘。さらに自身の行動も見直して反省します。

今までのエピソードでは、一部の人たちを”リア充”とタグ付けして、個人を見ることなく”友達になれない人たち”と決めつけていた業平。今回の”気付き”を通して、今後彼がどのように変わっていくのか、次巻以降が楽しみになりました。

業平が成長するまでの描き方について

前項で業平の成長について書かせていただきましたが、ここに至るまでの彼の経緯を見返すと、展開の巧さに驚かされました。

彼は元々、間違ったことを”間違っている”と言うことのできる人間でしたが、中三の時の夏祭りのトラウマにより、人間関係にかなり臆病になっていました。1巻~2巻でも、他人に対して積極的に踏み込むことを避けているように読めます。

しかし、2巻の終盤でエリアスから夏祭りの時に彼女が感じていたことを聞かされ、以前の彼の積極性が少し戻って今回のエピソードに至ったとしたなら、今回の彼の考え方や人付き合いの変化にも説得力が生まれてきます

業平の行動が薄っぺらな正義感でなく、”彼の成長”として読めたのは、ここまでの展開が丁寧に描かれていたからだと分かり、森田先生の構成の巧さに感動しました。

高鷲の魅力を感じる描写

今までは愛河のヒロイン力が強く、いまいち目立てていなかった高鷲ですが、今回のエピソードでは魅力を感じることが出来ました

セリフ的には残念な発言が多いですが、業平を思いやるような行動の頻度が上がったように感じます。業平自身も、自分と考え方の似ている高鷲に親近感を覚えているようですし、業平、高鷲、愛河の三人の関係性も面白くなってきました愛河は微妙に駆け引きを開始しているような描写もありますので、今後の展開が楽しみです。

 

以上、3巻についてのネタバレレビュー記事を書かせていただきました。シリーズものの良さを活かしつつ、今後の展開が楽しみになるような構成になっており、かなり満足の一冊となっています。

今回も長文をお読みいただきまして、ありがとうございます。

2巻ネタバレレビュー

tino-review.hatenablog.com