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富士見ファンタジア文庫「山本五十子の決断」の魅力をご紹介!!

富士見ファンタジア文庫新作「山本五十子の決断」!

ネタバレなしで魅力をご紹介します。

山本五十子の決断って?

山本五十子の決断 (ファンタジア文庫)

著者:如月真弘

イラスト:珈琲猫

戦火を生き抜く海軍乙女たちの、敗北の運命を覆せ!

修学旅行中、源葉洋平第2次大戦に酷似した世界に飛ばされた。そこで彼を助けたのは伝説の名将・山本五十六……ではなく、山本五十子と名乗る女の子!?

現代高校生が軍事・歴史知識で、彼女の運命を変える!

戦争の過酷さと萌えのギャップ

本作の舞台では、男性は全年齢、女性は20歳以上で海に入るとラ・メール症状を起こしてしまいます。ラ・メール症状とは、海に入ると5分以内に意識を失って溺死するというもの。その為、海軍は20歳以下の女性で構成されています。

更に、本作では第二次世界大戦時の日本海軍を土台に、有名な海軍軍人が美少女化して描かれており、連合艦隊司令長官山本五十六はもちろん、参謀長の宇垣纒、首席参謀の黒島亀人、戦務参謀の渡辺安次も少女の姿で登場します。

日常生活パートの海軍美少女たちの萌えシーンと、戦争時の過酷なシーンのギャップが、読んでいて最も印象に残りました。萌えシーンでキャラクターへの好感度を個々に上げつつ、戦争・軍略シーンをシリアスに描くことで、より後者のシーンに緊張感が生まれている印象です。

記号的ではない美少女軍人たち

美少女キャラが多数出てくる作品は、テンプレ属性をそれぞれ与えられた”記号的な”キャラクターになっていることが多々あります。しかし、本作の場合はそれぞれの内面部分についても踏み込んで描写されているため、より”人間的な”キャラクターのように感じました。

萌えパートでは甘党でまとめ役の女の子に、”実は戦争で非道な作戦を行っていることに自己嫌悪を覚えている”など「影の部分」の描写が添えられることで、よりリアリティを演出できていると思います。

ただ、少しラッキースケベ描写が多かったのが残念でした。商業的・ジャンル的に入れなければならないシーンで、物語の重さを軽減させる効果もあり多少は良いと思いますが、個人的には話の腰を折ってしまうので苦手です。

ミッドウェーまで描いてこそ成立する物語

少しネタバレになりますが、次巻以降で描かれるミッドウェー海戦を最高に盛り上げるため、本作1巻は土台となる世界観を中心に描かれています

世界情勢の説明とキャラクターたちの関係性の描写などが中心で、戦争自体は大きく進まない展開。もちろん1巻だけでも起承転結はあり、作品として成立してはいるのですが、クライマックスであるミッドウェー海戦が話題の中心にあるため、読者的にはどうしても気になってしまいます。

続巻まで読まないと、本作の”本当の評価”は出来なさそうですので、是非続きを刊行していただけると嬉しく思います。

 

以上、ネタバレなしで本作の魅力をご紹介しました。

今回も長文をお読みいただきましてありがとうございます。

試読レビューリンク

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