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《内容ネタバレ》「なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?」1巻をレビュー!

MF文庫J「なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか?」1巻についてレビュー!

※1巻のネタバレを含んでいますので、ご注意ください。

※ネタバレを希望されない場合は、以下の記事をご覧ください。

tino-review.hatenablog.com

なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか? 運命の剣 (MF文庫J)

1巻内容ダイジェスト

強大な法力を振るう悪魔族。天使やエルフ、ドワーフといった亜人種の勢力たる蛮神族。ゴーストなど、特殊な肉体をもつ聖霊。竜を頂点とする、巨大な獣たちの勢力である幻獣族人智を超えた強大な四種族に、人類が”かつて”脅かされていた世界。

人類は四種族を黒きピラミッド”墓所”に封印することに成功。主人公であるカイと同僚のアシュランサキ人類保護庁の職員として、墓所の警備にあたっています。ただ、既に警備任務は形骸化し、カイ以外に真剣に任務をこなしている者は殆どいない様子。

カイは過去に悪魔族の”墓所”へ転落したことがあり、そこで悪魔族に対して圧倒的な恐怖を覚え、以来愚直に訓練を継続。彼は四界戦闘式を習得し、墓所から四種族が出てきた時のために備えています。

ある日、幼馴染のジャンヌからデートに誘われたカイ。デートにも関わらず戦闘衣で現れたカイにジャンヌは皮肉を言うも、ショッピングを開始。何気ない会話をしていると、急に世界が歪み、空が黒く染まって、全てが空の黒点に吸い込まれ始めます。

『世界輪廻』発動。世界の『上書き』を実行する。

視界の砂嵐が消え、周囲を見渡したカイは、廃墟となった都市にいました。そこに現れたのは”漆黒の悪魔”。何とか敵を排除し、現場にやってきた同僚のサキとアシュランに出会うも、彼らは”人類保護庁”やカイのことを全く知らない様子。こちらの世界での二人は”人類反旗軍”という組織に所属していることを聞き、カイはこの世界についての情報を彼女らから収集することにします。

カイは、”この世界”は30年前に人類が四種族に敗れた世界であり、人間たちはひっそりと隠れて生活していること。「英雄シド」の伝承が存在すらしていないこと、人類反旗軍の指揮官として幼馴染のジャンヌが担ぎ出されていることを知ります。

”何故人類が大戦で勝利した訳でもないのに、墓所は存在しているのか?”という違和感を持ったカイは、墓所の調査に向かいます。そこで”シドの剣”を発見したカイは、円柱に磔になったリンネと出会います。五種族の特徴が入り混じった彼女に困惑するも、リンネが”シド”を知っていることや、彼女がどの種族にも受け入れてもらえなかったという”孤独”の存在であることを聞き、仲間として”正史の世界”に戻るため、共に行動することにします。

リンネと共に人類反旗軍で調べ物を開始するカイ。しかし、悪魔たちに秘密基地がバレてしまい、急襲を受けます。悪魔たちを退け、ウルザ連邦の旧王都ヴェルサレムにある人類反旗軍本部へと撤退を開始。本部で指揮官のジャンヌと面会したカイは、冥帝ヴァネッサを討つ作戦を立案します。

ウルザ連邦の奪還作戦を開始するジャンヌたち。カイ、リンネにサキとアシュランを含めた四人が特務部隊としてヴァネッサへと挑むことに。ジャンヌと護衛の花琳が道を切り開く中、光学迷彩を起動したカイたちは一気に突入を開始。仲間に援護されつつ、カイはヴァネッサの元へ単身辿り着きます。

冥帝ヴァネッサの正体はサキュバス。幻惑系の法術を使用され、苦戦するカイ。更に「爆砕」の法術も使用されるも、”世界座標の鍵”で死の運命を切除して九死に一生を得ます。

リンネも合流し、二対一となった最中、ヴァネッサの元に無数の黒点が出現。”英雄シド”というワードへ反応したヴァネッサに「揺らぎ」が感じられたため、切除器官により彼女の消滅が開始します。ヴァネッサは正体不明の怪物を撃退するも、与えられた傷は法力でも治せません。

仕切り直してカイ、リンネへ襲い掛かるヴァネッサ。カイが爆砕の法術に巻き込まれ、怒ったリンネは混沌種としての”真の力”を開放。禁呪「混沌病原体」を使用し、自身の命と共にヴァネッサの命を削り始めますが、法力阻害の呪いをかけられていたリンネは弱体化してしまいます。気絶から目を覚ましたカイは戦線に復帰して輪廻を庇い、ヴァネッサと対峙します。

ヴァネッサの法術を”世界座標の鍵”を用いて切り開きつつ、サキとアシュランの協力でヴァネッサに隙を作り出すことに成功します。リンネが囮役となり、四界戦闘式の格闘術でヴァネッサの意識を一瞬刈り取ります。最後は”世界座標の鍵”で断ち切り、悪魔族の英雄を倒します。

ヴァネッサは死ぬ間際”お前の知らない過去がある。お前の知る世界に隠された禁断の「記録」が”という言葉を残して消滅。カイは運命の憎悪、世界に隠された禁忌に触れてしまったような感覚になります。

悪魔族を撃破し、ウルザ連邦を取り戻した人類反旗軍。他の三英雄と戦う人類反旗軍にも大きな影響を与えます。カイとリンネは、「世界を改変した何者か」を突き止めるため、その他の多くの謎を解明するために、ジャンヌたちウルザ人類反旗軍と共に旅に出ます。

世界の真実に迫る壮大な物語

本作は1巻を読み終えても、まだまだ分からないことが多い物語です。

・世界輪廻とは何か?

・なぜ、カイとリンネのみが世界輪廻の影響を受けなかったのか?

・世界輪廻を発動させたのは何者か?

・英雄シドとは何者で、ヴァネッサへ”世界座標の鍵”を預けた理由は?

・英雄シドは百年前の大戦時に何を知り、なぜ世界輪廻を予見できたのか?

・カイが”世界座標の鍵”を使用できる理由は?

・”世界座標の鍵”から聞こえる声の正体は?

・ヴァネッサを切除器官により消滅させようとしたのは何者か?

・リンネの存在と”世界の真実”には関係があるのか?

ざっくりと書き出しただけでも、多くの未解決な謎が沢山あります。多くの謎を解明しながら、世界の運命へと近づいていく主人公。壮大なRPG作品のシナリオのようであり、続きが気になる作品です。

 

TIPS

《四界戦闘式》

”アーツ”と呼ばれ、人類保護庁の訓練課程に採用されている対他種族戦闘術。

《四英雄》

悪魔族、蛮神族、幻獣族、聖霊族のそれぞれを率いる最強の個体。人語をも理解する最強の四体の称号。

悪魔族の英雄”冥帝ヴァネッサ”、蛮神族の英雄”主天アルフレイヤ”、幻獣族の英雄”牙皇ラースイーエ”、聖霊族の英雄”霊元首・六元鏡光”。

《預言者シド》

この世のものとは思えない輝きを放つ剣で四種族の英雄を倒し、墓所に四種族を封印した英雄。

カイの元々いた世界では記録は残っているものの、「預言者シドは実在しない」とされ、「煌めく剣」も残ってはいない様子。

《法術》

古代において奇跡、あるいは魔術とよばれた力の総称。強力な法術になれば、人間の大型重火器に比類する破壊力があり、高位の悪魔であれば五月雨のごとく放ち続けることも可能。

《汎用型強襲銃剣「亜竜爪」》

幻獣族の一種である亜竜の爪を模したもの。大戦後に人類保護庁が開発した対他種族専用の武器。

略式エルフ弾:エルフが使用していたとされる法術を科学と技術で再現した弾丸。

略式ドレイク弾:亜竜が吐き出す炎の息吹を真似た爆弾。亜竜爪の刃を叩き込むと同時に発破。ゼロ距離爆破によって四種族を倒すように設計。

《世界座標の鍵(コードホルダー)》

悪魔の墓所でカイが”シドの剣”を見つけた際、どこからか聞こえた声が言った呼び名。”運命の憎悪に巻き込まれた者よ。この剣を手放すな。世界座標の鍵をーーー。”

世界座標の鍵は『運命』を斬り、無用なる死の運命を世界から切り離すことが可能です。

 

以上、1巻についてネタバレレビューさせていただきました。

今回も長文をお読みいただきましてありがとうございます。