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俺ガイル人気の理由を分析し、結末を予想!!12巻内容まで含めてシリーズを考察!!

先週2年4ヶ月ぶりに新刊12巻が発売された俺ガイルシリーズ!

発売後もいくつものサイトでレビューや考察が続々とアップされており、盛り上がり続けています!なぜ、俺ガイルシリーズはこんなにも人気があるのか、12巻までの内容を踏まえて考察していきます。

比企谷八幡という身近なダークヒーロー

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「俺ガイル」はダークヒーロー系小説
俺ガイルシリーズが人気な理由の一つとして、中高生男子の多くが特に共感し魅力を感じやすいダークヒーロー系主人公であることが挙げられます。
「他人のために頑張っているのに、周りに全く理解されないヒーロー」
比企谷くんは、スクールカーストの下位でぼっちキャラながらも、完全に開き直っており、常に斜に構えて物事を偏見的にとらえる性格。所属している奉仕部に持ち込まれた問題を、自身が悪役・道化役を演じることで解決していくダークヒーロー系主人公。自身の正義感に基づいて行動しているため、その行動が正義とは言いづらいタイプです。また、雪ノ下さんはそんな彼を「自意識の化物」と評しています。
学校ではカースト下位のぼっちでも、信念をもって正義を貫くダークヒーロー像は、特に中高生には身近で強い共感を得られる主人公なのではないでしょうか。
同系統のヒーローに夜神月DEATH NOTE)、バットマンルルーシュランペルージ(コードギアス:2期のラスト付近)などが挙げられますが、その誰よりも比企谷くんは、等身大の中高生に近い印象のキャラクターです。
また、このタイプの主人公がいる作品は、読者側が年をとってから改めて読むと、当時と違った印象になるのも面白いところだと思います。

勧善懲悪ではない物語

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ダークヒーロー系の作品の特徴でもありますが、善と悪がはっきりしないストーリーになっています。その曖昧さが魅力となり、奥深いストーリーを感じさせるのでしょう。
実際、現実世界では理不尽なことも多く、綺麗ごとでは解決できない問題も多数存在しています。そんな、正義のヒーローでは救えない、何かを犠牲にしなければいけない厳しい世界に、主人公の比企谷くんは自身の正義を信じて真っ向から立ち向かっていきます。
強い信念を持って問題を解決するも、周囲からは認めてもらえず、世界も思い通りにならない。孤独を感じつつも、ひたすら自身の信念を胸に秘めて新たな問題に挑んでいく。
ライトノベルでは爽快感を重視するため、勧善懲悪な物語と王道系ヒーローが多い中、本作「俺ガイル」シリーズはダークヒーロー系ストーリーの魅力をライトノベル作品に根付かせた筆頭的な存在なのだと思います。
特にストーリーで注目いただきたいのが、渡先生のバランス調整技術です。ダークヒーロー系物語の特徴として、全体的に暗く孤独な印象になりがちです。これは一見ライトノベルには不向きな要素ですが、「俺ガイル」の本文中には様々なパロディネタや砕けた口調のモノローグが散りばめられており、特有の暗さや陰鬱さを軽減させています。渡先生のその絶妙な調整が、より作品をヒット作へと押し上げているのだと思います。

主人公の孤独を癒す魅力的なヒロイン

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前項でも書きましたが、ダークヒーローは孤独です。しかし、そんなダークヒーローを理解してくれる魅力的なメインヒロインが、「俺ガイル」シリーズには2人存在しています。
雪ノ下雪乃
幻想的でまっすぐで、それでいて儚さを持っているヒロイン。表面的だけでなく内面的にも「綺麗すぎる」ため、周囲の悪意にさらされやすいのも特徴です。まさにダークヒーローが守りたくなるヒロイン像なのかもしれません。
由比ヶ浜結衣
現実的でまっすぐで、それでいて健気さを持っているヒロイン。主人公を陰で支えたり、自己犠牲しやすい主人公に振り回されたりしやすいキャラクターです。ダークヒーロー作品では定番となるヒロイン像だと思います。
ダークヒーローが孤独になればなるほど、理解者のヒロインたちは魅力的に。また、ヒロインたちが迷い、葛藤するほど、ダークヒーローは魅力的になります。そんな3人の相互作用が発揮されて描かれているからこそ、「俺ガイル」は名作なのだと思います。

陽乃さんが示唆した3人の関係性を考察

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陽乃さんからは共依存と評された関係性ですが、具体的に考察したいと思います。
比企谷八幡
ダークヒーローは頼られる人がいないと助けることができない。「助ける対象」であるの雪ノ下さんや由比ヶ浜さんの存在に、比企谷くん自身の存在が依存しているという見方。
雪ノ下雪乃
「誰かに助けてもらいたい」という比企谷くんへの依存。また、由比ヶ浜さんに対しても同様の依存が存在すると考えられます。
由比ヶ浜結衣
比企谷くんにとっては「助けられる存在」、雪ノ下さんにとっては「助ける存在」でいることで、3人の関係性を維持しようとしている。現状の関係性に依存
これをベースにしつつ、相互の恋愛感情も入り混じってくるためかなり複雑な関係性となっています。恋愛感情についても抽象的な表現が多いため、ベクトルがどの向きにどれくらい伸びているのかわかりにくいですが…。

※恋愛関係について
陽乃さんは比企谷くん自身が言った「三角関係」という3人の関係性を、「共依存」と言い直しています。比企谷くんと2人のヒロインの関係性で、どちらかから比企谷くんへの恋愛感情はないという意味にも取れそうですが…。

3人の関係性の今後を予想

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12巻終了時点で3人は以下のように動いています。
比企谷八幡
雪ノ下さんの「いつか私を助けて」という言葉を頼りに、再度雪ノ下さんのもとへ向かう。比企谷くんはダークヒーローとして信念を突き通すラストでした。
雪ノ下雪乃
比企谷くんと由比ヶ浜さんから精神的に自立するため、1人で生徒会主催のプラムを手伝っています。ただ、「精神的な自立≠物理的に一人でやる」ですので、少し空回りしているようですが…。結局プラムは中止の危機に瀕してしまいます。
由比ヶ浜結衣
比企谷くんを雪ノ下さんのもとへ送り出しつつ、恋愛感情として他の女性のところへ向かう比企谷くんへ嫉妬も見せています。自信が依存している3人の関係性と自身の恋愛感情が矛盾しており、迷い葛藤しています。

この状態から、今後この3人がどうなっていくのかを予想してみます。※あくまで予想です。

・比企谷くんがダークヒーローをラストまで貫く場合
比企谷くんの求めている「本物」とは、「彼の信念と正義を理解してくれる人」なのだと考えます。ダークヒーローとして孤独な彼のやることを理解して共にいてくれるような存在。彼はラストまでダークヒーローであることを貫き、そして「本物」を求め続けます。
雪ノ下さんは、プラムの手伝いを通して精神的に自立し、「助けられる対象」ではなくなることが目標。ラストは自立して、比企谷くんと並び立てるような存在になっているのではないかと予想します。ダークヒーローの相棒(もしくはライバル)的存在。並び立ったのちの、比企谷くんに対する感情がどんなものかはわかりませんが、お互い理解し合える関係性だと良いなと思います。
由比ヶ浜さんは迷い葛藤していますが、ラストは比企谷くんの正義を理解し受け入れて、陰から支えてくれるようになってくれると予想。ダークヒーローのヒロインポジションになるのではないでしょうか。

・比企谷くんがダークヒーローをやめる場合
ただ、ダークヒーローは良くも悪くも精神的に「青い」存在です。最終的に比企谷くんが成長し、ダークヒーロー的な生き方をやめる可能性もあります。
その場合、雪ノ下さんが自立していることが条件になりますが、陽乃さんの指摘する「共依存」の関係は解消され、フラットな状態で3人の関係を始めることができるようになります。俺たちの青春ラブコメはこれからだ!的なラストになるかと思います。

個人的には前者の方が好みの展開です。ただ、後者のようなパターンも別に悪くはないかなぁ。
上記とは別に、比企谷くんがダークヒーローを続けた上で3人バラバラとなる結末もありそうですが、できればハッピーエンドが良いので割愛しておきます。報われない男の子が主人公でしたし、最後は報われてほしいです。

渡先生なので、こんな予想をはるかに超えたラストになるかもしれませんが、どんな結末になっても楽しく読ませていただけると思います。

長文で妄想入り混じる考察、お読みいただきましてありがとうございました。