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角川スニーカー文庫「戦闘員、派遣します!」の魅力をご紹介!

この素晴らしい世界に祝福を!暁なつめ先生の新作!

作品の魅力をネタバレなしで紹介させていただきます。

戦闘員、派遣します!って?

戦闘員、派遣します! (角川スニーカー文庫)

秘密結社キサラギの世界征服は目前に迫り、主人公・戦闘員六号は贅沢な余生を想像していたのだが……上司A「次、異世界派遣だよ」→六号「うそん?」――不遇キャラたちが織りなす、異世界侵略バトルコメディ!!

派遣戦闘員のドタバタファンタジー

今回の新作も「このすば」同様のドタバタコメディ。ちょっとゲスでクズな悪の戦闘員六号と、アンドロイドの相棒アリスが、派遣先の惑星でやりたい放題暴れまわります。

世界観が異なるのみで、キャラクターの基本コンセプトとストーリー展開は「このすば」に非常に類似しています。「このすば」シリーズが好きな方であれば、確実に好きになれること間違いなしの作品。逆に、同シリーズが苦手な方は、本作も合わないかもしれません。

意外と強い戦闘員六号

「このすば」との最大の違いは、主人公の戦闘員六号が、実はかなり強いという設定。ゲスく狡く立ち回るため、なかなか目立ちませんが、全方位型回転バッソーを使いこなす六号は間違いなく最強系主人公です。

オーバーテクノロジーによって、派遣先の惑星で無双する主人公。ただし、彼が武器を召喚するには”悪行ポイント”と呼ばれる、悪行を重ねることで得られるポイントが必要で、それを稼ぐために六号は日々いたずらを繰り返します

大がかりな悪行を好まず、細々したいたずらで悪行ポイントを稼ぐ、小悪党の最強系主人公を中心としたドタバタ劇は、読んでいるとニヤッとしてしまうこと必然の良作コメディです。

残念で魅力的なヒロインたち

秘密結社キサラギ所属の戦闘員六号の周囲には、”ちょっと残念ですが”魅力的なヒロインたちが沢山登場します。

手柄と出世欲が強すぎる女騎士スノウ、祖父の教えを守って厨二的なキャラを演じるロゼ、大司祭にも関わらずビッチなグリム。更に、六号と共に惑星に派遣された、自爆大好きっ娘のアンドロイドであるアリスを加えた四人が、本作の主要ヒロインとなります。

外見は美人なのに、全員が残念な属性を付与されているのは、暁先生のお家芸的な作風。気付いたら愛着が湧いてしまう、不思議な魅力のあるキャラクターたちです。

 

以上、「戦闘員、派遣します!」の魅力を紹介させていただきました。今回の新作も期待通りの面白さでしたので、是非気になる方は手に取って読んでいただければと思います。

今回も長文をお読みいただきまして、ありがとうございます。

1巻試読レビューリンク

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《内容ネタバレ》「グランクレスト戦記」3巻をレビュー!!

富士見ファンタジア文庫グランクレスト戦記」シリーズ!

3巻についてレビューさせていただきます。

※3巻のネタバレを含みますのでご注意ください。

※ネタバレを希望されない方は、以下の作品紹介記事をご覧ください。

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グランクレスト戦記 3 白亜の公子〈ファンタジア文庫電子応援店限定版〉 (富士見ファンタジア文庫)

3巻内容ダイジェスト

大陸歴2013年3月1日、連合盟主のアレクシス・ドゥーゼ侯爵から、幻想詩連合の君主会議の知らせが届きます。ヴィラールはシルーカとテオを連れて、会議へと向かうことに。

会議の予行演習として、マルグレットの誕生日を祝っての祝宴に参加することとなったテオ。シルーカとダンスを踊っていると、ミルザーに稽古に誘われます。ミルザーの鋭い攻撃を、防御に専念することで何とか防ぎきることに成功。戦い方についてミルザーから皮肉を言われつつも、テオは自身の戦い方を貫きます

25歳の誕生日を迎えたマルグレットは、ヴィラールの契約魔法師を引退。最後の別れを惜しむマルグレットに、ヴィラールは自身の生い立ちについて語ります。クライシェ家から嫁いできたヴィラールの母は、彼が十歳の時に幽閉されていた牢屋で狂死。彼の母は、ヴィラールの幸せを願って、あえて息子から距離をとって死んでいったという話を聞かせた上で、ヴィラールは、マルグレットに自身の元を去って幸せになるよう伝えます。

ヴィラール率いるアルトゥーク及び諸国の軍勢は、君主会議に向けて出発。ハルーシアに向かう途中のフォーヴィスクローヴィスの二国を君主会議への手土産とする為、侵攻を開始します。

フォーヴィス王ジェリコの従属君主ラニはミルザーによって叩き切られ、後詰のラシックにより城も接収されます。また、テオは港湾都市へ侵攻し、ミルザーとは対照的に、民衆を味方につけて戦をせずに君主ラドヴァンを説得。ラドヴァンは同盟から連合へと下り、理想に共感したテオへの従属を希望します。

ラシックはフォーヴィス王ジェリコの城を包囲します。フォーヴィス王側の君主は次々と投降し、ジェリコはラシックとの一騎打ちで敗北フォーヴィス全土がわずか五日で征服されたという報を聞き、クローヴィス王アルフレートも連合への帰順を申し出ます。ヴィラールはその申し出を受諾し、イスメイア国境にて勝利宣言を実施。それは、アルトゥークを包囲していた同盟の網が破れた瞬間でした。

大陸歴2013年5月2日、ヴィラール一行は、ハルーシアへと入り、アレクシス・ドゥーゼの壮麗な居城へと到着します。アレクシスの他、テオが君主を目指すきっかけとなった宿敵、システィナ子爵ペデリコ・ロッシーニとも顔を合わせます。

夜になり、宿舎へと戻ったテオとシルーカの元へ、アレクシスがお忍びで訪問。クライシェ家のマリーネを未だに愛していること。全てを捨ててでも彼女と一緒になりたいこと。大陸全土の君主が争うことなく一つになって欲しいと願っていることをテオたちへ語ります。テオとは公的な場以外では友人として接したいというアレクシスの希望を聞き、テオも同意します。

君主会議が開始し、連合は引き続きアレクシスを盟主とし、同盟と和平の方向で調整することが決定。同盟を倒す千載一遇の好機を失った連合のアルトゥークは、逆にヴァルドリンド全軍の侵攻を受けてしまいます。更に、マルグレットからダルタニア太守のミルザーが同盟に寝返ったという一報が入り、ヴィラールは窮地に陥ります。

政治的な駆け引きを中心に描いたエピソード

ヴァルドリンド軍へ大きな被害を与え、フォーヴィスとクローヴィスも傘下に加えた連合。このまま同盟を飲み込めるはずだった連合ですが、アレクシスの不用意な一言により、ヴィラールを窮地に立たせてしまいます

マルグレットへと語った、自身のクライシェ家の血の呪いが、皮肉にも連合の命運を分けてしまったような結果となりました。

派閥と血縁、各国の政治的駆け引きが中心で、戦記モノとして非常に読み応えのあるエピソードでした。

4巻ネタバレレビュー

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2巻ネタバレレビュー

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《内容ネタバレ》「グランクレスト戦記」2巻をレビュー!!

富士見ファンタジア文庫グランクレスト戦記」シリーズ!

2巻についてレビューさせていただきます。

※2巻のネタバレを含みますのでご注意ください。

※ネタバレを希望されない方は、以下の作品紹介記事をご覧ください。

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グランクレスト戦記 2 常闇の城主、人狼の女王 (富士見ファンタジア文庫)

2巻内容ダイジェスト

騎士の爵位のみを残したテオと、契約魔法師のシルーカはアルトゥークの城へと入城。テオはヴィラールの近衛として傍に控えることになり、シルーカは他の契約魔導士たちとの顔合わせを済ませます。

数日後、小大陸ダルタニアの太子ミルザー・クーチェスを迎えての晩餐が開かれます。ミルザーはテオの野心のない行動を非難しますが、人心を掴む未知の魅力に興味を惹かれ、しばらくアルトゥークに滞在することにします

テオから爵位を預かっているラシックは、契約魔法師のモレーノと共に、セーヴィスの領土へと侵攻。セーヴィス王ナヴァルは前回の戦いで討ち取っているため、彼らは難なく制圧に成功します。ラシック達へ一矢報いるため、ナヴァルの一族は自害して混沌濃度を上げ、トロールを召喚。苦戦するも、ラシックがトロールを撃破し、聖印に吸収して勝利します。

シルーカは魔法師長マルグレットに命じられ、魔女の長老ゼルマ、人狼の女王クララ、吸血鬼の王ディミトリエを順に訪問することに。ゼルマは、常闇の森で昔、魔女と人狼、吸血鬼が女君主アデーレと協力して、デーモンロードを倒したこと。その英雄アデーレは、デーモンロードに魅せられて闇に堕ち、その後魔王としてエーラムに攻め込んでしまった逸話をシルーカへ話します。アデーレが魔王に堕ちた時の混沌儀の動きと、現在の混沌儀の動きがにているため、ゼルマはシルーカへ注意を促します。

人狼の女王クララに歓迎されるテオたち。そんな中、ヴァルドリンドの騎士たちが、人狼を襲っているという情報が女王の元へ届きます。テオたちは女王に協力を申し出て、近隣の連合君主との連携を開始します。

テオは近隣の砦や村を回ったのち、オイゲン男爵の城を訪問。アーヴィンが仕入れてきた情報により、エルマーという騎士がアルトゥークの混乱を目的に独断で動いていることを知ります。情報交換により、エルマーたちは吸血鬼の王に匿われている可能性が高いことが分かり、シルーカは吸血鬼の王の城へと向かうことにします。

吸血鬼の王ディミトリエは、地下に次元結界に封じられた魔王アデーレを匿い、その目覚めを心待ちにしていました。男爵の爵位を持つエルマーの聖印を育てて強大にすることで、魔王アデーレの次元結界を破る策を思い立ち、エルマーと協力して今回の人狼への襲撃を行ったと告白。更に、シルーカは彼から、同盟と連合の婚姻を邪魔したデーモンロードは、魔女ヤーナが召喚したという事実を聞きます。

魔女に娘を人質にとられた人狼クララは、エルマーの卑怯な策によって致命傷を負います。ヤーナによって命を奪われたクララの混沌を、エルマーは聖印に吸収。しかし、同じくヴァルドリンド騎士団のフランツはエルマーのやり方に賛同できず、彼を捨てて人狼たちへ投降します。

ディミトリエとエルマー目的が、魔王の復活アルトゥークの混乱であることをフランツから聞き出したテオは、吸血鬼の王の城へと向かいます。城でシルーカと合流し、魔王アデーレの復活を目撃。魔王アデーレは、自分自身で次元結界への封印を施したことが判明します。

魔王アデーレは、世界が極大混沌の再来となるか、秩序の時代がやってくるかするまで封印されていることを選択。ディミトリエは、永遠にアデーレと共に生きていくため、極大混沌の時代を目指すことを決意。魔女ヤーナの所属する”パンドラ”という組織に加入します。

吸血鬼の王ディミトリエが君主たちの敵となったことを伝えるため、アルトゥークへと引き返すテオたち。魔王の協力を得ることができなかったエルマーも、罪を償うべくテオに同行します。オイゲンの城に着いたのち、彼は人狼たちによって引き裂かれ、死することで混沌を彼らへと返却しました。

テオはアルトゥークの増援を従え、オイゲン男爵たちと共にディミトリエの城へと進軍。ミルザーもテオを見定めるために同行します。魔女ヤーナは取り逃がすも、大きな被害なく城の包囲を完了させます。新しい人狼の王イオンを中心とした精鋭の活躍により、ディミトリエを負傷させ、退却させることに成功。褒賞として、テオは常闇の森吸血鬼の城を、ヴィラールから貰い受けることとなりました。

敵キャラクターたちの強い”意思”と”矜持”

今回のエピソードでテオたちの敵となった、ヴァルドリンドのエルマーや吸血鬼の王ディミトリエたち。悪役ではあるものの、それぞれが自分たちの意思と矜持を持っており、活き活きとしたキャラクターとして描かれています。

マリーネへの忠誠心のために汚い手段を取ろうとも、最後には騎士の誇りを持って死んだエルマー。最愛の人と永遠に暮らすことを夢見て、混沌を目指す吸血鬼の王。それぞれの意思と矜持がしっかりと描かれていることで、物語に深く絡まって、ストーリーに奥深い味わいが出ているように感じます。

本作のように、勧善懲悪でなく、敵側のキャラクター描写も丁寧に描かれている作品は、面白いストーリーになっているものが多い印象です。

TIPS

《レイヤー》

邪紋使いや強力な混沌を聖印に吸収した君主の一部に、異世界の投影体に魅せられ、その姿や能力を模倣する者があらわれます。それらを”レイヤー”と呼び、アイシェラのヴァルキリーもその一種です。

3巻ネタバレレビュー

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1巻ネタバレレビュー

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ソク読み月間ランキング(2017年10月)!1位は「ようこそ実力至上主義の教室へ」7巻!!

2017年10月最終日!

10月に発売された新刊かつ管理人の購入した22作品のランキングをご紹介します。

ソク読み月間ランキング 10月ノミネート作品

角川スニーカー文庫

1.ミリオン・クラウン

電撃文庫

2.幼馴染の山吹さん

3.陰キャになりたい陽乃森さん

4.Disファンタジー・ディスコード 異世界が嫌いでもエルフの神様になれますか?

5.誰でもなれる!ラノベ主人公

GA文庫

6.魔法使いにはさせませんよ!

7.魔王の娘を嫁に田舎暮らしを始めたが、幸せになってはダメらしい。

8.落第騎士の英雄譚 13巻

ガガガ文庫

9.クズと天使の二周目生活

10.出会ってひと突きで絶頂除霊!

11.物理的に孤立している俺の高校生活 3巻

富士見ファンタジア文庫

12.冴えない彼女の育てかた 13巻

13.グランクレスト戦記 9巻

14.山本五十子の決断

15.デュシア・クロニクル 十二騎士団の反逆軍師

16.魔王は服の着方がわからない

MF文庫J

17.ようこそ実力至上主義の教室へ 7巻

18.魔法塾 生涯777連敗の魔導師だった私がニート講師のおかげで飛躍できました。

19.魔力融資ができない魔導師は絶対服従ですよ?

20.図書迷宮

21.なぜ僕の世界を誰も覚えていないのか? 2巻

ヒーロー文庫

22.群青の竜騎士

ソク読み月間ランキングの評価方法について

・2017年10月1日~10月31日の期間に発売された作品が対象。

・管理人が購入して実際に読んだ作品のみノミネート。

・評価は「オススメ度」「ストーリー」「キャラクター」の3軸の合計ポイントで評価。各項目は最大10ポイントとし、合計は最大30ポイントとなる。

「オススメ度(オ)」:他者にどの程度自身オススメできるかを評価。紹介できるターゲット層が大きな作品ほど高ポイントとなります。

「ストーリー(ス)」:作品全体として「面白い」と思える要素がどの程度存在しているかを評価。色々な見方や楽しみ方がある作品ほど高ポイントとなります。

「キャラクター(キ)」:キャラクターの目的やその他設定が定まっているかどうかについて評価。キャラクターの目的がハッキリしていて、人物描写が丁寧であるほど高ポイントとなります。

ソク読み月間ランキング 結果発表

第1位 ようこそ実力至上主義の教室へ 7巻

ようこそ実力至上主義の教室へ 7 (MF文庫J)

オ:9  ス:10  キ:10  合計:29ポイント

海外からの評価も高い学園頭脳バトル系作品。7巻はクライマックスのエピソードでもあり、非常に盛り上がる内容になっています。いままで最大のライバルとなっていたCクラスとの決着。キリも良いので、シリーズ未読の方は是非このタイミングでお試しいただければと思います。

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第2位 冴えない彼女の育てかた 13巻

オ:9  ス:9  キ:10  合計:28ポイント

5年間続いたシリーズの最終巻。大人気作品の為、終わってしまうのは寂しく感じます。テンプレヒロインが溢れる昨今の萌え産業へのアンチテーゼ的な作品。いままで見たことがないヒロイン像が描かれていますので、是非興味がある方は手にとっていただければと思うシリーズです。

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第3位 ミリオン・クラウン

オ:8  ス:8  キ:8  合計:24ポイント

問題児シリーズの原点とも言える作品が本作「ミリオン・クラウン」です。ポストアポカリプスの世界観で、人類が存続を掛けて、強大な王冠種に挑む作品。問題児シリーズを読んでいる方は共通の設定にニヤリとでき、シリーズ未読の方も圧倒的な世界観に浸れる良作です。

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第4位 出会ってひと突きで絶頂除霊!

オ:6  ス:8  キ:9  合計:23ポイント

タイトルと表紙で購入を躊躇いがちな本作ですが、内容は王道の学園異能バトル作品です。下ネタに抵抗がなければ、かなり笑えて楽しめる作品ですので、是非お試しいただければと思います。

第5位  群青の竜騎士

オ:8  ス:8  キ:6  合計:22ポイント

戦闘機とファンタジーを合わせた珍しい設定の作品です。極端な萌え描写がなく落ち着いていて、読みやすい印象でした。どこか物悲しくて刹那的な雰囲気が癖になる、期待の新作です。

第6位  物理的に孤立している俺の高校生活 3巻

オ:7  ス:8  キ:6  合計:21ポイント

第7位  デュシア・クロニクル 十二騎士団の反逆軍師

オ:7  ス:7  キ:6  合計:20ポイント

第8位  幼馴染の山吹さん

オ:7  ス:7  キ:5  合計:19ポイント

第8位  グランクレスト戦記 9巻

オ:8  ス:6  キ:5  合計:19ポイント

第10位  魔王の娘を嫁に田舎暮らしを始めたが、幸せになってはダメらしい。

オ:7  ス:6  キ:5  合計:18ポイント

 

以上、トップ10を紹介させて頂きました。

10月は大人気タイトルの続編が複数刊行され、非常に盛り上がった月だったと感じます。

注目の新作も出てきましたので、今後が楽しみです!

MF文庫J「図書迷宮」の魅力をご紹介!

MF文庫Jの長編新作「図書迷宮」!

ネタバレなしで魅力を紹介させていただきます。

※用語集を作成しましたので、本作を読まれていて必要な方はご覧ください。

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図書迷宮って?

図書迷宮 (MF文庫J)

著者:十字静

イラスト:しらび

足掻いてください、あなたが人間足りうるために。

あなたは思い出さなければなりません。心的外傷の奥に潜む父の仇を探し出し、奪われた名誉と失った魔法を取り戻すのです。吸血鬼の真祖(ハイ・デイライトウォーカー)の少女、アルテリアと共に。そのために図書館都市を訪れ、ありとあらゆる本が存在する図書迷宮に足を踏み入れたのですから。

あなたには一つの大きな障害があります。あなたの記憶は八時間しか保ちません。ですが、方法はあります。確かにあるのです。足掻いてください、あなたが人間足りうるために。全ての記憶を取り返すために。

真実を追い求める物語

本作の最大の魅力は、”複雑怪奇なストーリー”。殺されてしまった父、失った魔法、八時間しか保てない記憶。全てを見失った主人公が、吸血鬼の真祖と共に”真実”を探し求めます。

「なぜ主人公は吸血鬼の真祖と共にいるのか?」「だれが父を殺した黒幕なのか?」「なぜ主人公は魔法が使えないのか?」

図書館都市という不思議な街で、主人公が手に入れる様々な情報のピースを繋ぎ合わせ、何が真実なのかを考える物語です。

主人公が手に入れる情報には”嘘”も混じっており、読者側も展開を理解しながら読み進めないと混乱してしまう、複雑な構成になっています。ボリュームは相当ありますが、時間を置いてしまうと展開が分からなくなるため、一気に読むのがオススメです。

ストーリー優先のキャラクターたち

図書迷宮を舞台に繰り広げられる壮大なストーリーが魅力の本作。ただ、著者の書きたいストーリーがハッキリとし過ぎているため、キャラクターたちは”ストーリーを描くための歯車”となってしまっている印象もあります。

展開は二転三転し、迫力のあるストーリーになっていますが、キャラクターたちが”ストーリー優先”で動くため、実際の行動とキャラクターのイメージが乖離して、冷静に考えると違和感を抱くシーンがいくつかあります。

キャラクター重視で作品を読まれている方の場合、あまり好みの作品ではない可能性がありますのでご注意ください。

肝心なところでご都合主義な設定

世界観や魔法発動までの設定など、壮大且つ細かに練られていて、興味を惹かれる内容になっています。

ただ、魔導書の発動条件や異能の効果などで曖昧な部分が多く、クライマックスでは、若干主人公側に都合よく傾き過ぎな印象もありました。後出しで追加される設定も多かったため、クライマックス以降は若干置いてけぼりにされてしまったような気分になります。

 

以上、図書迷宮について紹介させていただきました。

批評に近い記事になってしまいましたが、”著者の書きたいものを描いた”という印象が強い作品です。

あまり読者側のことを意識されていない印象もありますが、”ありきたりな作品”に飽きた方にはオススメできる作品かと思います。

今回も長文をお読みいただきありがとうございます。

《内容ネタバレ》MF文庫J「図書迷宮」用語集!

MF文庫J新作の「図書迷宮」!

本作の内容を整理するため、用語をまとめさせていただきます。

図書迷宮 (MF文庫J)

図書館都市アレクサンドリア

あらゆる書物が眠る遺跡書庫の街。地下には図書迷宮が存在し、昇降機にて迷宮へ移動可能。多数の探索ギルドが存在し、図書迷宮を探索して神の遺産たる技術や文化を収集しています。図書迷宮から発掘された科学技術は民間転用され、何十万もの人々の生活を支えています

薬草院

”学ぶ意思を持つものならば、悪魔でも死神でも受け入れる”を理想とする図書館都市四大ギルドのひとつ。総本山は天に伸びる大樹のようなアレクサンドリア大薬草院。奥月の父も在籍していた探索ギルドでもあります。

偉大な博士(ドクトルマグナ)

四大ギルドの第三位「薬草院」の中でも最優の探索者にのみ与えられる、ギルド最高位の学位・職位であり称号。迷宮探索、書籍研究、魔法戦闘、後進育成と万事に秀でた超人。

魔導書

千一頁の最後の祈り

アルテリアから渡された魔導書で、持ち主の記憶をそっくりそのまま書き写す本。八時間ごとに記憶がリセットされる主人公にとって生命線となる魔導書。本書の数十センチ範囲内にいる間、重要な記憶が書き込まれ、逆に本にある記憶は主人公へ転写されます。また、主人公が覚えていない八時間以上前の記憶は書けず、千頁までしか記録残量がありません。

また、”記録の改編”により知識を獲得することも可能。ただし、”その知識・記憶を得る方法を知っていること”と、”物理的な改竄を必要としないこと”が記録の改変の条件であるため、筋肉量を増加させたり、魔法運用能力を取り戻したりなどは不可能です。

記憶を取り戻す本

主人公が五年前の真実を知るために探し求めている本

折り紙マイスターになるための折り紙セット

アルテリアの持つ、ナイフなどの日用品に変化する折り紙。魔法運用能力がなくとも、使用可能です。

論理障壁用の本

図書館都市でも一般的な個人防御手段の一つで、”論理障壁”という魔力回路を用いた自動展開式の防御魔法の総称。熟練の術者が練り上げた論理障壁は、極めて強固な盾となります。

収納本

荷物を異空間に収納しておける魔導書。限界容量が個別に定められています。

常記書

複数冊で構成され、一冊に記入した内容を他の本に共有する機能があります。

映し鏡の写し紙

接触した他の魔導書の一頁を、魔法的な機能も含めて一回だけ複製することが可能な魔導書。

恒真の尋問書

書き込んだ質問への返答がYESだった場合に限り、いかなる相手にも返答を強要できる強制尋問書。詠唱中に尋問を行うことで、対魔法としても活用可能

再製紙用再生紙

一度使った本を再使用することができる魔導書。

停時式超速達封筒

宛先まで超高速で届く封筒(切手貼付済)

図書迷宮の吸血鬼譚

”千一頁の最後の祈り”の原点にして、”記憶を保管できる本”の原典。魔王アルテリアが奥月の父に掛けられた忘却の呪い(三分二十六秒ごとに記憶が消去される呪い)から自身を守るために探し出した、ランクAの魔導書。

吸血鬼の真祖

図書迷宮に跋扈する迷宮生物(モンスター)の中でも、最も警戒すべき凶悪な化物。直射日光を浴びても滅びない、上位の吸血種。本作中ではアルテリア・アル=アタナシア=アムナシア=アウサナシアを指します。別名、図書迷宮の銀の夜

能力喰らい

アルテリアの異名で、別名タレントイーター。彼女は血を吸った相手の記憶を喰らい、増幅し、自らの能力とすることができます。腕力、知力、魔力、治癒速度など、あらゆるものを強奪可能。アルテリアの眷属となった奥月も、微弱ながらタレントイーターの能力を行使でき、”記憶改竄”と”自己吸血”により、十数倍程度の能力向上が可能です。

変異性ショック

”吸血鬼の贄”である主人公が、外傷などにより大量出血した場合、不足した人間性を、吸血鬼性が埋めることになります。その際に流入する吸血鬼性への拒絶反応のことを変異性ショックと言い、発症は狂死と同義です。

魔力回路

世界に満ちる魔素を精錬する、精錬路のこと。人類は一般的に神経系を基盤とする一本の「主要回路」を持っており、一つの回路には一つの魔法しか装填できないので、効率よく回路を運用することが魔法戦闘の鍵となります。

魔法の使用には、まず魔導書の呪文ページを開き、書き込まれている呪紋と魔力回路を接続します。次に魔素を呼吸により吸引し、詠唱しながら回路へ流します。詠唱は数種類のキーワード、つまり呪文から成り、呪文を唱え終えることで、魔法が回路に装填されます。魔法の発行タイミングは自由に設定でき、戦闘前に先行詠唱して隙を減らすか、回路を空けて適応戦術を取るかの選択も重要。

副次回路と二重回路

副次回路は主要回路とは異なり、無詠唱の自動展開式魔法が装填可能。また、二重回路とは、一つの回路に複数の魔法を装填することが出来る特殊な能力のことを指します。

対魔法

魔法は魔素と魔導書、魔力回路、呪文詠唱がなければ構築不能。そのため、敵の詠唱を阻止する魔法や、魔素の流れを阻害する魔法を撃つことで、魔法の発行を阻止することが出来ます

更に、魔法を打ち消す対抗呪文は、回路を占有するというデメリットはあるものの、詠唱速度が速いため、敵の詠唱が自分よりも早い場合でも対応が可能になります。また、技後硬直も通常の魔法に比べて対抗呪文の方が短いため、敵の隙を突ける可能性もあります。

護符の水晶

最愛の息子を守るため、奥月の父が持てる技術の全てを注ぎ込んで作り出した魔道具。一回しか使用できないものの、絶対防御魔法が封入されています。

図書迷宮と図書館

図書迷宮の大部分は正六角形の”閲覧室”。しかし、稀に”図書館”と呼ばれる大規模書庫が発掘されます。図書館はそれぞれ固有の特色をもっており、「刃鉄の図書館」や「黒森の図書館」、「浮嶽の図書館」など二つ名で呼ばれます。

「浮嶽の図書館」のように、本の発掘が落ち着いた図書館は、人々の居住区として活用されています。

ガガガ文庫「出会ってひと突きで絶頂除霊!」の魅力をご紹介!!

ガガガ文庫「出会ってひと突きで絶頂除霊!」!

赤城大空先生の新作について、ネタバレなしで作品を紹介させていただきます。

出会ってひと突きで絶頂除霊!って?

出会ってひと突きで絶頂除霊! (ガガガ文庫)

著者:赤城大空

イラスト:魔太郎

除霊でトリップ?CまでイケないB級除霊! 
――絶頂除霊
それは突いた相手を生者死者問わず強制的に絶頂させ、もののついでみたいに悪霊怪異を昇天させるろくでもない猥褻能力
各地に悪霊や怪異が出没し、退魔師という職業が存在するこの世界。
未来ある少年少女たちの中から、才能のあるものは「退魔学園」にて修行を積む。
絶頂除霊などという、呪われた能力をその身に宿す少年・古屋晴久は、その学園の中でもおちこぼれだ。
なにせ、能力を使ったら、色々な意味で(社会的に)死ぬ……。
だが、晴久は出会ってしまった。
同じような呪いの眼――淫魔眼を持つ少女・宗谷美咲に。
人の秘密をたやすく暴く、恐怖の瞳術の使い手に。
かくして(半ば強制的に)退魔師史上最低最悪、されどいつしか最強と呼ばれる退魔師たちの伝説が幕を開ける。初めてのまともなお仕事は、怪異・乳避け女との大活劇。
――んほおおおおおおおおおおおおおおおっ!?
今宵も、街には嬌声が響き渡る。それは紛れもなく、昇天の証明。ポンコツ退魔師たちが卑猥な能力で大活躍?エロは世界を救う?ちょっぴりエッチな退魔活劇!!
下ネタという概念が存在しない退屈な世界』『二度めの夏、二度と会えない君』の著者がおくる新シリーズ。

規格外のキャラクターたちによる王道ストーリー

タイトルや表紙などを見ると「本当にガガガ文庫ライトノベルなのか?」と不安になる作品ですが、内容的には退魔師が活躍する王道学園異能バトルものになっています。

ストーリーはテンポが良く、しっかりとセオリーを抑えた構成。世界観も、学園異能バトルのよくある設定を活用。それらをベースに、赤城先生の持ち味である”下品さ”が盛り込まれた、規格外のキャラクターたちが暴れまわります。

冒頭で読者を完全に作品に引き込み、最後まで一気に読ませてしまう、勢いのある作品でした。

卑猥だけど凄い!?ポンコツ退魔師たち

本作の主人公である古屋晴久は、”快楽媚孔”をツボ押しすることで、一撃で除霊することのできる「絶頂除霊」の使い手。人の隠された性癖を見破る異能「淫魔眼」を持つ、退魔師の名門宗谷家の令嬢、宗谷美咲と出会うことで、退魔師として第一線で戦うことになります。

古屋の「絶頂除霊」は高位の霊すら一撃で除霊することが出来る強力な異能で、退魔師の中でも最強の部類に属します。しかし、あまりにも卑猥な能力の為、主人公は能力のことを秘密にして生活しており、周囲には落ちこぼれとして認識されています。

基本的には通常の学園異能バトル作品の俺TUEEE主人公設定ですが、”卑猥な最強能力”という赤城先生独自の要素により、全く新しい作品になっていて、新鮮な気分で読むことが出来ます。更に、前述の要素によって、主人公の厨二感がなくなっているのも良い印象です。

謎の異能の正体と主人公の秘密

主人公の「絶頂除霊」と宗谷の「淫魔眼」は、正体の分からない異能退魔師の中でもトップクラスのみ、それらの異能に関する情報に接することが出来るため、古屋と宗谷は退魔師としての地位を向上させるべく、様々なミッションへと挑んでいきます。

また、主人公は経歴的にも謎な部分が多く、トップクラスの退魔師葛乃葉楓とも交流がある様子。王道ストーリーに併せて、続きが気になる伏線が複数散りばめられており、続巻が楽しみになる構成になっています。

 

以上、タイトルと表紙で躊躇いがちですが、非常に完成度の高い作品ですので、”下ネタ”が苦手でない方は是非ご覧になっていただければと思います。

今回も長文をお読みいただき、ありがとうございます。